今すぐ好きって言って!
マネージャーを務める私は部活中、ずっと好きだった彼を密かに目で追っていた。
しかしある日、彼から突然の告白を受け、それに喜んで応じた。
彼と付き合って1ヶ月。
念願の彼氏が出来て、毎日幸せだと感じていた。
だけど、そう思っていたのは私だけだったのかもしれない。
肝心なことを忘れていたのだ。
“俺の彼女になれ”
それが告白の言葉で、ドラマやマンガを見て培った憧れていた私の理想とは少し違った。
部活後、事情を知る友人たちは今までなにも言わず黙っていたがそれも限界に達し、内に秘めていたことを口々に言った。
「ホンマに付き合うとるん?」
「なんか奴隷化してねぇ?」
「奴隷っつか、樺地化?」
「うわ、宍戸も岳人もきっつー!」
「それよりも、跡部さんはなんで先輩に告白したんですかね?」
そう言った鳳にみんながおまえが一番ヒドいことを言ってる!と指摘されていた。
その場に耐えられず、堪えていた涙もこぼれかかった時、監督と打ち合わせを終えた景吾が部室に来るや私に声をかけてきた。
そして冒頭の会話に至った。
「どうかしたか?」
『…なんでもない、』
本当はよくなんかない。
だけど、この場で景吾に打ち明けるなんて出来なかった。
『(好きなのって私だけ…?)』
笑い者にされて初めて気づいた。
浮かれてた私って、周りから見たらただのバカじゃん?
『ね、景吾?』
「あん?」
『……………』
話に切り出せないまま、私はいつも通り、景吾の家まで来てしまっていた。
そこに座って待ってろ、と言われてなにも言わずに指示されたイスに腰を下ろした。
部屋を出ていって数分後、景吾は自室に戻ってきた。
ドアの音だけを聞いて私は口を開いた。
ドアに背を向けていたから顔を見られないですむと思った。
『私のこと……好き?』
「…なんだよ、いきなり。」
景吾からの返答に変な間が開いていて怖くなった。
何度も聞く勇気はなくて、それきりなにも言わなかった。
ふと顔を上げれば、呆れた顔をした景吾がいて、なにを言われるのかとびくびくしていた。
「アイツらになんか言われたんだろ。部活終わってから変だもんな。」
『……景吾は私を奴隷みたいに扱ってるってみんなが、』
耐えきれずこぼれる涙を手で拭い、俯くと手を握られ、左手に冷たさを感じ、顔を上げた。
「バーカ、変な心配してんじゃねーよ。俺がそんなに信じられないのか?」
冷たい感覚の正体は薬指で輝いたシルバーの指輪だった。
『……じゃあ、好き?』
そう聞けば、景吾はそっぽ向いて言った。
“恥ずかしくて言えるかよ”
顔を赤らめていた彼が嘘をついているとは思えなかった。
私たちの気持ちはすれ違ってなかったんだね?
今すぐ
好きって言って!
一回しか言わねぇからよく聞けよ?……俺はおまえがたまらなく好きだ。
** END **
2007.9.20
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