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優しい嘘はいらない


ねぇ?

この私たちの世界が破滅に至ることがあると思う?


「ないな。」


自信過剰気味なあなたはそう言うに決まってる。

予想通りの回答で嬉しかった。

だけど、不安なの。


「不安だ?俺様が頼りないってか?」


そうじゃない。

ただこの先、あなたは他の人を、私はあなた以外の他の人を好きになることがないかと時たま考えてしまう。

たぶん幸せすぎて。

それ以上の幸せはないんだから、次に訪れるとしたら不幸なこと。


「俺はおまえだけを見てる。だから、そんなに心配すんじゃねぇよ。」

『……うん、』


そう言った、あなたを信じたい。


「それともなんだ?おまえは俺以外の男を見る予定でもあるのか?」

『そんなわけ…!』

「なら、いいじゃねぇか。」


明日、私たちがどうなるかわからないのに気楽なことを言うあなた。

その時は、まさか破滅に至るなんて思いもしなかったのよね?















『景吾ぉぉぉー!!』















暗闇の中、さまよう。

あなたの光がない、冷たく、無情な世界にいる。


『景吾、どこ?』


捜し求めてのばした手で掴むのは空気だけ。

見つめる視線の先がどこを向いているかわからないくらい真っ暗。


『け、…ご?』


呟いたあなたの名前は辺りに馴染んで消えた。


「明良、まだ跡部を思ってるん?」


だって、彼の声が聞こえるの。


「跡部は死んだやん…」


私に向ける彼の屈託ない笑顔が脳裏に焼き付いてる。

目の前には彼が見える。


「いい加減、跡部なんか忘れぇや!俺が守ったるさかい。」


抱きしめられたときの感覚、香り、心地よさが違う。

私は景吾じゃなきゃ嫌だ。


『(幸せを教えてくれた彼はどこ?)』


目を閉じれば涙が一筋、流れた。

景吾がいなくなってもう1年にもなるのに、私はあなたを今も愛している。


『この私たちの世界が破滅に至ることがあると思う?』

「ないな。」





優しい嘘はいらない
今もあなたの言葉を信じる私はバカ?





** END **

2007.11.17


あきゅろす。
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