[携帯モード] [URL送信]
いつかわからん記念日非公開


ウチ、今ものっそい(すごい)クラスに気になる男の子がいてる。

前々から気にしてたけど今、思春期やからか異常なほど気になる。

部活中、学校の廊下や教室、公道など構わずダッシュでかけて行く彼。


「どこがええねん。」

『あの靡く髪と汗!最高やん。』

「ただ走っとるだけやないか。しかも汗って……ちょっとキモいで。」


いや、そこ言われると自分の恋を疑いたくなるから言うたらアカンて。禁句や禁句。

ウチの意中の人の話をしとる相手はクラスメートの蔵ノ介。


「謙也なんてただのヘタレやん。」

『そのヘタレさがまたええねやんかー』

「自分サド気質やったんや。怖い怖い。」


意中の人――謙也がやってること見ているとツッコミ所多くて暇にならへんわ。

全く、ウチの好みとしてはドストライクやねん。蔵ノ介にはわからんやろうけどね!

いや…わかったら怖いか。

いや、でも蔵ノ介は謙也のこと弄り倒したくなる小動物的な奴って言うてたから…わかるんかも。うえっ。


『なぁ、蔵ノ介。謙也て好きな人いるんかなー?知ってる?』

「なんや知らんのん?」

『え!?いてるん!?』

「あんなわかりやすい奴やのに…知らんなんて明良、」

『……なんや。その哀れんだ目は。』

「筋金入りの鈍感やで!」


雷が落ちたように衝撃が走る。

せやけど、実際に雷が落ちたら死んでまうからアニメや漫画にあるあのシーンてえげつないわ。


「明良明良!…て、どないしてん。」


いつの間にか現れた謙也がウチに声をかけてきた。その謙也には悪いけど、ただ今撃沈中やねん。

面白がるように笑う蔵ノ介はウチの肩を頑張りや、と励ましつつ叩く。

せやけど笑てる時点でおちょくってんねやアホ!


「今、お前の好きな人は誰かっちゅー話しててん。」

「え?俺の?」

「謙也にしても明良にしても、こないわかりやすいのにわからんなんて…」


蔵ノ介は可哀相なやっちゃ、と笑いながら席を立った。

馬鹿にしとんのか。ウチは馬鹿やないわ!


「…明良の好きな人て白石なんか?」

『は?なんでそう思うん?』

「いつも一緒にいてるやん。」

「いや、せやけど…やから好きって決められちゃかなんで…」

『こんなん好きになったら人生終わりやわ。』

「うわ、そこまで言うかー?」

『今自分かて迷惑そうな顔しとったやん。』


蔵ノ介はやってられんわ、言うてウチらにトイレ行ってくる、と告げるや教室を出てった。


『謙也の好きな人てさ…』

「お、おう。」

『………蔵ノ介?』

「……は?なんでそうなるん!?」

『いや、いつも白石白石言うてるし。』


もちろん冗談で言うたつもりや。

せやけど、この猪突猛進なイノシシ謙也にそないな冗談が通用するとは思えない。


「なんでやねん!俺が好きなんはおまえや!」


謙也はそう言うてからだぁぁぁ!ってゴリラみたいに叫びだした。

謙也の告白に喜ぶ間もなく、ウチは謙也の雄叫びにビビってもうて固まった。


「告白すれば永遠に結ばれるっちゅー伝説の木の下で告ろ思うとったんに!」

『け、謙也…落ち着き?』

「落ち着いてられるか!ちゃんと呼び出しの手紙まで書いたのに!」


もしかして形から入りたい人なんやろか?

なんでもええけど、ウチの胸きゃん返せやアホ。


「悪い、今のん忘れて。」

『……嫌や。』


ウチの返事に謙也がビクリと肩を震わせた。

怒ってるわけやないねんけど、謙也は勢い余ってしてしまった告白に凹んでるみたいや。


『聞いたからには忘れへんよ。謙也の気持ち、忘れたないし。ウチ、謙也んこと好きやし。』

「明良…」

『あ。なんやったら、今から伝説の木の下で告白受けたるよ。何回でも聞いたるわ。』

「い、いいいや、1回で結構やわ。」


ウチの返事を聞いたからか、さっきの凹んだ様子はなかった。

それから少し照れながら謙也はウチに言うた。


「せやけど、一緒に倉庫裏の壁に名前は書きにいこうや。」

『相合い傘のやつ?』

「おう。」


ウチの四天宝寺には相合い傘の下にお互いの名前を今使われてへん木造倉庫裏の壁に書くと幸せになれるっちゅー伝説もある。


『ええけど……謙也って漢字どないして書くんやっけ?』

「好きな奴の名前も書けんのんか!」

『蔵ノ介は書けるんやけど。』

「……やっぱり白石か。」


うわっ!目がすわってるわ。

ホンマ冗談の通じひんやっちゃ。


『うそうそ!うそやて謙也。書かれへんわけないやんか〜』

「いじけるで。」

『(アカン、可愛すぎる…!)』


謙也、ウチらの記念日、しっかり母校の伝説に乗っかって書いたで。

来年のこの日、忘れんと祝おうな。


「なんや、ようやくキメたんか。鈍いのも困りもんやな。」

「おまえが明良は渡さへんだの付き合うとるだの別れただの言うからやんか!」

『…どういうこと蔵ノ介〜?』

「謙也は冗談が通じひんっちゅーことや。」

『うん確かに、』

「納得すんなや!片思いやった俺の2年帰せや白石!」

「ははは、」

『え、そんなに!?』


て、待てよ…2年前?

それじゃ、既にうちら両思いやったん?


「うわ…ホンマ鈍いわ。嫌やコイツら。」



いつかわからん記念日
ホンマもんの記念日は2年前やった





** END **

20090602

6月夢コン(テーマ:恋人)参加作品




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!