[携帯モード] [URL送信]
たまにはこんな日も


休日、普通の女の子ならなにをするのだろうか?

お買い物したり、映画を観たり、彼氏とデートしたり、ドライブに出掛けたり?

こんなに天気がいい休日に部屋の中でダラダラしているのは私くらいかもしれない。


「あら明良、出掛けないの?」

『んー』

「休日に出掛ける用事がないなんて寂しい子に育っちゃって。」


ダラダラと過ごしているベッドの上にいる私を見た母親はちょっとだけバカにして笑っていた。


「お母さんはお父さんとデートしてくるわ。」

『あーはいはい。いってらー』


そんな歳になってなにがデートだ、なんて内心呆れながら身をお越しもせず手だけ振った。

両親が出掛け、静かになった家の中で私は一人で過ごすわけだけど、このままだと明日の朝までベッドの上で過ごすことになりそう。なんて思っていた時、携帯が着信して私を飛び上がらせた。


『びっくりしたー……もしもし?』

「今どこにいる?」

『開口一番がそれ?おはよう、とかないわけ?』

「今どこだって聞いてんだよ。」


電話の相手にムカついた私はそのまま電話を切って携帯を手放した。するとすぐに携帯がまた鳴りだした。


『もー!なんなのよ!』

「なんで切りやがった!」

『ムカついたから!』

「可愛くねー女だな。」


ただでさえ苛々していたのにさらに私を苛立たせた彼は跡部景吾。どこで間違ったのか私は彼の彼女なのです。


『その可愛くない女を彼女にしたのは誰なわけ?』

「その可愛くないところが可愛いんだよ。」

『はぁ?』

「(明良の場合、ツンデレなだけだしな。)」


話が逸れたことで電話をかけてきた彼の目的を聞き忘れるところだった。

休日のこんな時間にかけてきたのだから予想はつくけど。


『で?なんの用?』

「彼氏に向かってなんの用とはなんだ。」

『私忙しいの。早くして。』

「忙しい?部屋でグダグダしてるヤツの言うことかよ。」


なんでダラダラしてるのわかってんの?

あ、いつも一緒にいるから行動を読まれてるのね。つくづくムカつくわね。


『今、料理してるの。』

「ふーん?俺様はこれから料理するところだけどな。」

『聞いてないし。』


景吾の思い通りになるなんて悔しいから料理している、と嘘をついた。でも、その嘘がとんでもないことになった。


「花粉症女。」

『そうよ、家から出たくないの!忙しいから切るからね。』

「別にいいぜ。」


今までは電話越しに聞こえていた。でも、今は違った。電話から聞こえたんじゃない。

ベッドから身を起こそうとした時にはもう遅かった。彼は知らぬ間に私の部屋に侵入していて、私をベッドへ沈めた。


「よお、」

『…なんで勝手に入ってきてんのよ。』

「勝手じゃないぜ。そこでおまえの親御さんに会ったからな。」

『あの二人、タイミング悪すぎだし。』


仰向けになって寝ていた私が部屋に入ってきた景吾に気づかなかったのは自分の腕を目の上に置いていたから。失敗した。

それで今こんな形で拘束されちゃってるんだから最悪。


「明良が花粉症でこの時期は引きこもってる、っておまえの幼なじみから聞いて俺様直々に来てやったんだぜ?」

『(岳人めっ!)』

「有り難く思え。」

『迷惑きわまりないんですが、』

「あーん?んなこという口はこれか?」


顎を固定されて口づけられる。

鼻で呼吸せざるを得なくて息を吸うと鼻の奥をくすぐるような感覚がした。


『ダメ!……っくしょん!』


キス(しかも無理矢理)の最中だったけど、景吾一人で醸し出してた甘い空気は今のくしゃみで消えた。…はず。ちょっと花粉症が有り難い。


「てめ…」

『仕方ないじゃない。花粉症だもん。景吾、家に上がる前に服についた花粉払ってきてないんでしょ?』


エアコンがあるとはいえ、外で服に付着して持ち込んだ花粉はどうにもならない。

だからこの時期、家族は外で服を叩いてから帰宅するように気をつけてくれる。それをするかしないかではかなり違うのよね。


『症状が悪化する前に早く帰って?』


ちょっと可愛子ぶって言ってみた。

慣れないことをすると気持ち悪いものだとしみじみ思っていると景吾が笑い出した。

そんなに気持ち悪かったか。


「へー?服に花粉がついちまうんだ?」

『叩けばかなり花粉落ちるって聞いたし、実際かなり違う。』

「…安心しろよ。」

『いや、なにが?』


景吾は白昼堂々と私の服に手をかけた。

なにをしようとしているのか、またなにをされるのかがわかったからその手を阻止しようと試みた。


「今から服なんて脱いじまうからよ。」

『いやいやいや!こんな昼間からはちょっと!』

「夜まで待てねぇよ。」

『ちょ…!触んないでよ!ダメ!』

「彼女に欲情してなにが悪い。それに、これから料理するって言っただろ?」


どうしてそうなるのよ。

あーもう、私の静かな休日を返してちょうだい!

それよりお母さん、お父さん、早く帰ってきて助けてよ!


「心配すんな、夜まで二人だからよ。口だって押さえなくても平気だ。」

『は?なんで!?』

「うちの系列にあるレストランの招待券渡したからな。喜んでたぜ?」

『お母さん…』





たまにはこんな日も
俺のために一日尽くしてみろよ





** END **

20070506

あささまとお話していて書きたくなった花粉症ネタ。
跡部はこそーり、部屋に侵入するのがうまいと思われる*笑
この後、明良ちゃんは跡部に料理されてしまいました〜





あきゅろす。
無料HPエムペ!