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バッドエンディング


ふわふわと動く髪。

柔らかな眼差しと物腰。

触ると一段と明良の柔らかさを感じた。

見ているだけでは満足できなくなっていた。


「欲しい、」

『え?』

「明良のすべてが、」

『…やっ、』


拒まれるが俺のスイッチは入っていた。

時遅し、というやつだ。


抱きしめれば、鼓動の早さが伝わってきた。


『だ、だめだよ景吾、』

「慰めてくれねぇの?」

『ッ、』


今にも涙がこぼれ落ちそうな明良。

胸が痛んだが、明良がほしいのは事実。


『でも、悪い…ことだもん…』

「明良は俺じゃダメなのか?」

『そんなこと!……そんなことないけど、』

「じゃあ良いじゃねーか。」


優しく彼女をベッドへ押し倒した。

始めてみるアングルにのどが鳴った。

涙目で見上げてくる彼女は魅力的で俺を狼に変えるのはたやすかった。


「口、隠すな。」

『や…だ、』

「キス出来ねえー」

『こんなのよくないよ、景吾らしくない。』


初めて見に来てくれた試合で俺は自分自身に負けた。

良い試合とはお世辞にも言えなくて、それを見に来てくれた彼女がなにより胸を痛めていた。


「黙ってろ、」


手を口元から離し、明良の唇をペロッと舐めてからキスをした。

気が緩んだ隙に服を脱がせた。


『や!』

「昔はよく一緒に風呂に入ったろ?」

『昔の話じゃない!』

「こんなに綺麗になりやがって。」

『いつからそんなに口説き上手になったの?』

「明良にだけだ、」


胸を弄んでいた手は下へ下へと移動する。

白い肌に罪の印を多く刻んだ。

徐々に彼女の内が溶けていき、やがては蜜が溢れるようになった。

二人が一体になったとき、俺たちは大人になった。


「明良、」

『ッ、は…あん、』

「   」

『け、…ごぉ!』


甘い囁きに俺を酔わす声。

今も忘れないあの熱。

最高に幸せだった。


「明良っ!」

『――あぁ、あッ、ああッ!』


しかし、幼なじみという壁を壊し、俺たちの関係は損なわれた。

許されると思った。

あの夏、二人で犯した罪が――

伝わっていると思ってた。

あの夏、正直に言った気持ちは――


「結婚?」

『う、ん…雅治にプロポーズされてね。』


今、伝えなければ失うことになるとわかっていた。

だから、


『ちょ!』

「おまえ、俺を避け続けて、会いに来たと思ったら結婚の報告か!ふざけんなよ!!」


俺を酔わせた唇から、また俺を酔わすセリフを吐かせようとした。


「なんで仁王なんだよ!明良は俺の――」

『け、いご?』


言う資格もなければ、明良を縛る理由もない。

自分の情けなさを痛感した。


「明良、俺はあの夏、嘘はついてない。」

『え?』

「好きだから抱いた。」

『!』

「あんなタイミングで抱くことになったが……真剣に愛してた、」

『……もっと、早く聞きたかったよ。』


涙をこぼした彼女を俺は抱きしめずにいられなかった。

すれ違ったまま時が流れたせいで、罪を犯した二人は苦しんでいたなんて――





バッドエンディング
お互いを想っていたのにすれ違っていたのはなんでだ?






** END **

2007.11.15


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