俺だけが特別 敵がいない“帝王”とか称されて強い人間とされているが、実は俺は弱い。 そう、アイツらに弱いんだ。 「明良、早く早くー!」 「よーし!飛び込むぞぉ!」 『二人とも焦ると転んじゃうよ?』 なぜこんなことになったのだろう。 “夏と言えば、跡部の別荘で避暑&お泊まり会!” なんて誰かが言い出したもんだから俺たちはテニスの遠征なんて偽り、東京を離れて数日をこの別荘で過ごすことになった。 それはもちろん、俺の恋人である明良も連れて……楽しい夏休みになるはずだった。 ところが―― 「彼女、岳人とジローに引っ張りだこやな?」 「…………」 明良は俺たちレギュラー陣の中で“可愛いし、愛想が良い”と評判があり、人気がある。 その上、よく気が利くから岳人やジローにしたら良い姉役となる。 「(わざわざ発破かけるなんて忍足さんらしい。)」 「(長太郎、今の跡部にかまうなよ?とばっちり喰うのは目に見えてるからな。)」 忍足は俺の反応を見て楽しんでいる。 岳人やジローは明良に甘えたがりなだけでアイツらに非はない、と考えると腹を立てる理由もこれといってない。 (怒れないというのもあるが。) しかし、その甘えん坊ぶりが夜まで発揮されると話は別だった。 「俺、明良と寝たいー!!」 「あ、ずるいC〜!」 「お二人さんケンカはアカンよ?」 見る見るうちに目の前の話は展開していき、結果的に雑魚寝する羽目になった。 さらに明良の両隣はあの二人で埋まった。 「(彼氏の権利さえ通用しねぇ…)」 明良が気にして俺をチラッと見たのに気づいたがフイッと視線を逸らした。 『景吾……』 名前を呼ばれたが聞こえない振りをしてその場を去った。 あぁいう場合、立ち去るのが一番の解決策だ。 明良をとられたことで俺が当たり散らす格好悪い姿を見られなくてすむ。 「はぁ、情けねぇ。」 別室のバルコニーに出て、空を見上げると無数の輝く星に慰めさめられた気がした。 涼しい風に体も冷え、少し頭を冷めた。 しばらくしてから聞こえてきたのは愛する明良の声。 初めは空耳かと思ったが背中に感じた暖かさで本物だとわかった。 『ごめんね、景吾?』 「寝たんじゃなかったのか?」 冷静を装うが明良にはバレていたのかもしれない。 『……岳人とジロー寝かしてきたから解放されたの。』 優しく微笑む明良を見て、耐え切れずに抱きしめた。 またさっき胸の内に納めた熱が甦った。 「明良、おまえは俺のなんだ?」 『え?』 「俺のなんだっていうんだ。」 『……そんなヤキモチ妬いてたんだ。』 またもそう言った後に優しく笑う明良。 今度は違う熱がこみ上げてきた。 『ちょ、景吾どうしたの?』 「ついて来い、」 『な、なに!?』 室内に入るなり、ベッドに明良を投げ込んだ。 我慢の限界だった。 「明良は俺のだ。」 『う、ん…』 わかってたくせに明良は人事のように笑うんだ。 さぁ、俺を慰めろ。 俺が満足すると思う仕方で攻めてみろ。 『ねぇ、景吾。そんなに怒らないで?』 そう言うと唇に何度もキスをしてくる明良は可愛かった。 俺の手を自分の頬に添えさせると潤んだ瞳で見つめてきた。 『ごめんね、景吾。』 「謝ってばっかりだったら責められないじゃねぇかよ。」 『許してくれるの?』 俺はそう聞いてなにも言わずに明良の服を脱がせた。 目を白黒させて俺を見ていたが、なにを言わんとしていたのか理解したらしい。 頬を赤く染めた。 「……抱かせてくれたらな?」 『やっぱり、ヤキモチ妬いてたんだ。』 ようやく俺の気持ちをわかったらしく、頬を染めたまま笑った。 そんな姿も可愛いと思えた。 しかし、今夜は―― 「容赦はしないからな。」 俺だけが特別 誰が相手でも譲る気はない ** END ** 2007.7.18 藍夢へ 可愛い生き物の眼差しから目を背けるのは大変ですよね*汗 |