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言葉がほしい


これは授業中の話。

いくら関東でも、もうすぐ雪が降るだろうと思ってガラス越しに空を眺めてる。

秋の終わり、冬支度をするために自然が風や雨嵐を起こす。

被害を受けたガラス窓はそのせいでかなり汚れていた。


「なにしとう?」

『雪降らんかなーって思って。』

「ふーん?」


隣の席の仁王雅治に素っ気ない返事をすると相手も同じように返事をした。


『北海道は雪降ってるわけじゃない?』

「そうじゃのう、」

『雪合戦とか雪だるま作りとかで授業潰れるじゃん?』

「そんなん幼稚園児だけじゃ、」


雪が降る。それだけでロマンチックだ。

素敵な彼氏と寒いーなんて良いながら手を繋いでデートしたり、雪が降る中でキスしたり――…


「んなことあるわけなかよ。」

『否定しないで。私のロマンなの!』


仁王め。なんて可愛くないヤツだ。

冬限定の理想の日々を思い描いたってのに!


『仁王にわかるわけないよ。彼女いないんだからさ。』

「明良がおるじゃろに。」

『私……は違う。私には別な人がいる!』

「今ん間はなんじゃ。しかも別て?」

『二次元に。』

「……いつからそっちの気になったん?」


仁王の彼女ではない、とハッキリいうのはなんとなく悔しくて言葉を惜しんだ。

仁王にはバレバレだろうけど。

私たち、正式に付き合ってるわけじゃない。だから、こんな言い方しか出来なかった。


「理想の冬ねー…」

『あーでも、コタツの中で猫ごっこするのもいいな!』

「二次元にコタツか。ますますグータラさんじゃのう。」


まぁ、外は寒いし、寂しい人間である私はコタツの中ですることもなく、ただみかんを食べてテレビを見て過ごす以外にないんだけど。


「彼氏がほしいん?」

『んー別に。いたら忙しそうだもん。』

「俺はほしいん。」

『聞いてないし。』

「明良なら彼女にほしい。」

『ふーん?……は?』


仁王の言葉に思わず仁王を見た。(それまでは窓の向こうばかり見ていた。)


「やっとこっち見た。明良の後頭部ばっか見とってもつまらん。」


私が見た仁王は子供臭く笑っていた。

自分がはめられたんだと思うと悔しくなって、また窓の向こうを見た。


「のう、明良。なんで彼氏が出来ると忙しいん?」

『構わないといけないから。』

「構う?ベッドでか?」

『はぁ!?』


ついついデカイ声を出してしまった。思わず口を押さえて、無言で周りに謝罪するのに頭を下げた。


『アンタさぁ…』

「なんじゃい。」

『……私にはもう関係ないし。』

「関係なくなんかなかよ。」


仁王を見ると目を細めて妖艶に笑った。

そういえば友達が言っていた。仁王は私の前だとよく笑うって(今のはまた違うけど。)

…なんでだろ?

なんかわかんないけど、わかんないことにイラつく。(わけわからん。)


『仁王なら彼女簡単に出来るでしょ。ベッドでイチャイチャする相手なんていくらでもいるんじゃない?』

「…明良。」


遊びの合間、私が好きだ、と仁王の背中に書いてからなにもないまま時間が過ぎた。

なにもないのに一緒に時間を過ごしたかんじ。


「明良がいい、」

『……』

「いいんか?俺が違う女とイチャイチャしとうて、明良はそんでいいん?」

『…いいんじゃない?』

「嘘が下手じゃのう、」


私を見て笑う仁王に腹がたって窓の方を見た。

それでか、慰めるように髪を撫でてきた。


「悪い、可愛くてつい。」

『仁王はいつもずるい。』

「……さっき言うたぜよ。明良なら彼女にしたいって。」


仁王に確かな言葉を求めたことはなかった。なのにずるいなんていう権利はない。

私は今頃、大切なことに気付いた。


「あー謝るから泣かんで?」

『泣…いてないっ!』


苦しくなるくらい、仁王雅治が好きだからあなたの本心が知りたいってこと。

早くはっきりさせたいと焦っていたことを。


「お詫びに一緒にベッド入っちゃるきに。」

『それ…お詫びって言わない。』

「どうじゃ?」

『どうって……』

「俺ん彼女、なってくれるじゃろ?」

『言うのとするの順番間違えてるし。』

「ククッ…今更。」


仁王の言葉で安心してる自分がいた。





言葉がほしい
あなたに愛されたいと思う自分がいた





** END **

20081204

「オオカミと子羊」の続編2。
好き→告白→恋人→ベッドインではなかった二人。伝わり切らなかった部分は言葉でねv






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