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ずっと、トモダチ


空に雲一つない晴天だったあの日。

真っ青な空に一筋の飛行機雲。

太陽の日差しが眩しくて、蝉がジワジワと鳴いているのを聞くと夏が来たと思う。


『亮、ジロー早くー!』


幼き心を忘れまいと麦わら帽子なんか被っちゃって。

恥ずかしいなんて思わないし思えないのは目の前に広がる海が私を興奮させるから。


「明良〜走ると転けるCー」

「マジで転けたら激ダサだな。」


夏になったらこの海に三人で毎年来ると約束をしてから何度目の夏だろう?

私たちは中学三年生になった。


『天気良くてよかった!天気予報見てて不安だったけど、』

「ここに来るとき天気悪かったことなんて一度もないだろ。」

「不思議〜」


いつも天候に恵まれ、楽しい一日を過ごすことが出来ていた。


『ジロー、砂のお城つくろ?』

「うっし!あそこでつくろっか。」

『うん、』


私は子供臭い提案について来てくれる二人に感謝してる。

ジローは良いとして、亮は海に来るより長太郎とテニスしてる方が良いだろう。

全国制覇に燃える氷帝学園テニス部の部活が休みの日、結局のところ部員は自主練習に時間を費やす。

その貴重な休みの日にジローと亮は私のために海に来てくれた。


「約束だろが。」

「約束だもんね!」


正直、今年は諦めてた。

高校進学の推薦も控えてたし、全国大会もあったし。

でも二人は約束を守ってくれた。


「だって昔からの約束だし、守らなかったらなんか…ね、宍戸?」

「そうそう。気持ち悪いっつーか、なんつーか…」


幼いときからの友達っていうのは貴重だと思う。

それだけで小さな約束が大きな約束、大切な約束になるんだもん。


“ずっとトモダチね!”


そう幼い三人が約束の指切りをしたのはこの海だった。

ここは思い出深い場所というわけだ。


「ところで明良ー」

『んー?』

「ここに来るってさ?20歳なっても、40歳なっても3人で来れんのかなー?」

『……』


私はわかってる。

亮はわかってるはず。

ジローもわかってるはず。


『来れるに決まってるでしょ!今までだって来たんだし。つか来る!』

「明良が宣言したC〜」

「すげー自信。」

『亮とジローは来たくないの!?』


勢いとノリで言った言葉にはっとして二人を恐る恐る見た。

それで後悔したのは言うまでもない。


「(ここに来るのは“ずっとトモダチ”だからだったよな。)」

「(俺、明良が好きだからそれはちょっと無理だC。)」

「(少なからず、ジローが明良を好きな以上、無理だよな。つか、明良がジローに持ってかれるの見てるなんて冗談じゃねーし。)」


二人がそれぞれ眉間にシワを寄せて口を閉ざしてしまったから。


『(いつまでも子供じゃないもんね…)』


私たちはわかっている。

徐々に、あの無邪気だった頃のように友達でいるという約束さえ守れないようになり始めていることを――





ずっと、トモダチ
男と女の友情なんて存在しない





** END **
#2008.6.23



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