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夢でいいから


風邪なんかひいたことがあまりないから、久々に風邪にかかると――


『(こんなにも風邪って辛いものだっけ?)』


風邪の恐ろしさを改めて実感する。

鼻が詰まって息苦しいし、頭はぼーとするし、 熱が高いから涙が溢れる。

早く治ってほしいと思いながら横になっているのに良くなる傾向は見られない。

目を開けていると疲れてしまい、わりとすぐ眠れる。

でも、少し寝ては目が覚める。

その度にがっかりする。


『(……治ってない。)』


そう簡単に治らなくてもすこしでも良くなっていればいいのに、と思う。

喉の痛みは良くなるどころかズキズキと痛みが増したよう。


『はぁー…』


大好きな部活でみんなの練習風景を見て、スコアを付けられない。

ただ、写真立てに入れたみんなと撮った写真、動かないみんなを眺めて時間を潰した。


携帯が時々メールを受信し、音を発するくらいで無音の部屋。


『(誰かな…?)』


携帯を手にして思ったより時間が進んでなかったから時計を見てがっかりした。


『(まだ…こんな時間?)』


みんなのメール見てたらお見舞いに来てくれる、なんてあるから朝から楽しみにしてたのもある。

布団を被り直して、枕に頭を預け、瞼を閉じた。

携帯を見ていたせいか、目が疲れたように感じて眠りについた。


みんな部活してるかな?

スコアは誰が付けてるんだろう?


眠っているのに夢の中の私は部活熱心と思えるくらい部活のことを考えていた。

その時、ふわりと私の髪を誰かが撫でた。


「明良が風邪だなんて無茶しすぎたんじゃねーの?」


よく知ってるその声に安堵した。

声低く、胸に響くような優しい声に。


「早く良くなれよ。」


そう言われた後、足音が少しずつ遠ざかっていくように感じた。

不安になった私は寝ているなんて出来ず、目を覚ました。


『待、って…』


乾燥してまともな声が出なかった。

掠れた雑音にかき消されるような声でもあなたは反応してくれた。


「明良。」


ドアノブに延ばしていた手を下ろし、私の元まで来てくれた。

そして、夢の中で感じたと同じように髪を撫でてくれた。


「具合はどうだ?」

『元気になった。』

「鼻声で涙目の奴がいう台詞じゃねぇな。」

景吾はふと笑ってサイドテーブルにあったティッシュを取り、それで私の涙を拭いてくれた。


「とにかく寝ろ。」

『うん、』

「で、早く元気になれ。じゃねーとアイツらがうるさくてたまらねぇ。明良が心配だーだの、明良がいないとつまらねーだの。」


アイツらとは部のみんなのことだろう。


『アイツら?』


そのアイツらに一番乗りでお見舞いに来てくれた景吾は入らないのかな?って思った。

景吾がお見舞いに来てくれた時間からすると部活を抜けてきたと理解したから。


「俺もだ。」


景吾の答えに嬉しくなり、顔を綻ばせた。

すると笑うな、と不機嫌そうな声とともに軽くデコピンされた。


『寝てたんだけど景吾が来て、帰るってわかったから思わず引き留めちゃった。ごめん。部活抜けてきてくれたんだよね?』

「たまにはいいだろ。滅多に見れない貴重な姿も見たし。(風邪ひいてると色っぽい。)」

『貴重な姿?……あ。景吾のエッチ!』

「はぁ?」

『こんなんなのは今日だけなんだから!』


嬉しかったよ。

景吾が心配して来てくれたこと。

だから――





夢でいいから
欲張って引き留めちゃったの





** END **

2008.6.17
愛されマネ。
完成まで1週間もかかった。
リハビリしなきゃ…




あきゅろす。
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