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初恋は実るもの


初恋は3歳の時、優しい音色を奏でる彼に心奪われた。


「なに弾いてほしい?」

『んーと、んーと、きらきらぼし!』

「きらきら星ね。」


リクエストする曲は決まってこれ。と、いうのは当時の私はそれぐらいしか曲名を知らなかったのだ。





出会って1年もしないうちに彼はご両親の都合で引っ越すことになった。


“バイバイじゃないよ”

“また会えるから泣かないで?”

“絶対に会いに来るよ!”


いつ?、と聞けば彼は“明良が大きくなったら”と答えた。

懐かしい話だ。










そう約束して別れてから10年近く経つ今、私は中学1年生になった。

今は学歴が物を言う時代なので、両親の意向で私はある学校に転校することになった。

今まで通っていた学校のレベルとは比べ物にならないところ、氷帝学園という名の学校に。


「いいか?ここが生徒会室。」

『ふ〜ん?生徒会室と言う名の景吾くんのアジトね?』

「あん?バカ言うなよ。」

『ごめんなさーい。』


両親同士が昔から友人同士で私たちもその関係で親しくなった。

良き兄、妹としてお付き合いしている。


そのせいもあってか転校初日の今日、生徒会長である景吾くんが直々に校内案内をしてくれた。


「ここが俺様が所属してるテニス部の監督がいる音楽準備室だ。」

『(音楽……)』

「どうした、明良。」

『……ねぇ、景吾くん。氷帝にバイオリンが上手な―――』

「上手な、なんだよ?」


遠くから微かに聞こえてくるバイオリンの音。

優しい音色に合わない曲目――きらきら星。


「なんで泣いてんだよ。オ…オイ、明良!?」


確信した私は自然と足が前に出、走っていた。

期待を胸に抱き、早く成長した彼に会いたい気持ちを抑える。


『ちょ…たろ…くん、……ここ?』


音がより鮮明に聞こえた場所で足を止め、近くの教室のドアを静かに開けた。


『長太郎くん!!』

「……?」


駆け寄り、10年前より大きくなった背中に抱きついた。


「まさか……明良?」

『本物だ!』

「嘘だろ?明良なの?」


未だ疑う彼に信じてもらえる方法はただ一つ。

彼から数歩下がり、一心に見つめて言った。


『……きらきら星弾いて?』

「!」


その言葉で確信できたのか、長太郎くんは私を抱きしめた。


「もちろんだよ、」


そう言って、彼はバイオリンを弾き始めた。

10年経ってわかったことがある。


『長太郎くん、』

「なに?」

『私ね?長太郎くんが大好き。』

「ありがとう。俺も明良が大好きだよ。」


あの頃と変わらず彼が大好きなこと。

初恋は実らない、なんて言葉が世の中にはあるけど…あれって本当?


「明良、俺……明良のこと忘れたことなかったよ。」

『うん、』


ねぇ、長太郎くん?

期待しちゃってもいい?

この予感は当たる?





初恋は実るもの
あの頃とはまた違う恋が始まる気がする





** END **

20070715

初めて恋をした日、その時の気持ち、人を純粋に愛することを忘れないで。

ちなみに來恋の初恋の相手は長太郎に激似!笑





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