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眠れぬ夜は君のせい


ひたすら時計がカチカチと言い、刻々と時間を刻んでいる音が聞こえた。

右を向いて、左を向いて、仰向けになって、最終的にうつ伏せた。

それなのに昼間にご挨拶に来た睡魔は肝心な時に現れず、私は未だ眠れずにいた。

意地悪なものだ。

きっとどこかで私が眠れないために苦しんでいるのを笑ってるんだろう。


明日は朝練なのに、早く寝なくちゃ。


そう焦れば焦るほど目が冴え、眠れなくなっていった。

ベッドに入って時間はどれだけ経過したのだろう?と疑問に思いつつ、携帯を手探りで探し始めた。

でも、ディスプレイの光を見たらますます眠れなくなると思い、一時は諦めた。

しかし、やはり気になり、携帯を開いてしまった。


『0時31分…もう明日だしー!』


予想外だった時間の経過に凹みながら私は枕に顔を押しつけた。

がっかりしつつ、目を細めながら携帯を眺めていた。

するとふとある人物を思い出し、アドレス帳を開いた。


『……起きてるかな?』


時間が時間だったけどとりあえず電話をかけてみよう、と思い、発信ボタンを押した。

しばらく鳴り響いているコール音がそのまま永遠に続きそうな予感がして、終話ボタンに指を伸ばした。

その時――


「はい?」


彼は電話に出てくれた。

なんとなく安心していると不機嫌そうな声で続けて彼はこう言った。


「こんな時間にどうしたんだよ。」


ただ眠れないから、と答えても、彼はきっと言う。


「素直に俺の声が聞きたかった、って可愛らしく言えねえのか?あーん?」


確かにまず初めに頭に浮かんだのは他の誰でもなく跡部だったんだけど、理由はそんなものではなく、本当に眠れなかっただけ。


『言えません。』

「そうかよ。で、なんの用だ?」

『用事はない。眠れないから誰かとお話でもしようかと思って。』

「てっきり俺様の美声を『違う!』


いつもこんな冗談を言われてははねつける。

それが跡部と私。


『今なにかしてた?』

「本を読んでた。」

『なんの本?』

「推理小説、」

『跡部が推理小説?珍しいね。』

「時折、答えが不明瞭な場合、探偵は確信を得るために一か八かの賭に出る。」


質問の答えにならなかった返事を聞いて、小説の一文を読み上げたんだと思った私は次に跡部がなんと読むのか期待してた。


「明良、おまえ…俺のこと好きだろ。」


しかし、次の発言は小説の一文ではなく、跡部の賭に出た言葉だったとわかった。

驚いた私は終話ボタンを押してしまったのだけど、後にその失態に気づく。

それより、その時はなんで跡部があんなこと聞いてきたかわからなくて悶々と考えたのだ。


「ふっ、ホントに素直じゃねえな明良は。」


明日、学校で跡部に会ってなにか言われるのがなにより怖い。

だって、今の態度は肯定と見なされてしまいそうじゃない?

あぁもう、跡部のバカ!





眠れぬ夜は君のせい
余計に眠れなくなったじゃんかー!





** END **

2008.5.22
眠れなかった夜に出だしだけ書いてあったものです(*´v`*)



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