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恋に終わりなし


夢を見た。

出会いから始まった日からの思い出を映画館で見ているかのような映像だった。


そう。始まりは彼からの告白だった。

確かに仁王雅治といえば、独特な話し方で格好良いという噂で有名だった。


「俺、どうやら先輩が好きみたいなんよね。じゃき、付き合わんか?」


興味本位で私はOKし、交際が始まり、次第にそれが友達に知れ渡った。

結果、みんなにバカ呼ばわりされ、女遊びの激しい男だからやめておけ、と釘を打たれた。

なにせ“ペテン師”もしくは“詐欺師”なんて呼ばれてるから、友達がそういうのもわからなくはない。


「は?タラシ?」

『雅治のこと、みんなにそう言われたの。良い噂は聞かないって。』

「…明良先輩は信じたん?」

『……』


話をしていても、デートしてても女の扱いは慣れている感じがした。

実際、手を繋いでくれたり、レストランでかかった食費の会計を私がトイレに行ってる間に済ましてくれたり。

挙げればきりがないけど雅治は本当に女を喜ばせるのがうまかった。


『みんながいうこと、わからなくはない…かな?』

「なんじゃい。それじゃ、なにか。明良先輩は俺がペテン師じゃけん、先輩に対する気持ちも偽りだって決めつけるん?」

『……』

「あーあ。俺、付き合って間もない彼女にふられるんか〜情けないのう。」


雅治はそう言って俯きながら苦笑した。

綺麗な銀色の髪がうなだれ、顔を隠してしまったせいで表情は見えなかったけど強ばった口だけは見えた。

私は雅治を信じて正直に言った。


『…怖いの。どうすればいいかわからない。私……』


すでに雅治を好きになりかけてる。

そう言いたかった言葉は口から出ていくことはなかった。

雅治は私の手にそっと触れてからしっかり握った。


「俺を信じんしゃいよ。」


顔を上げると近くに雅治の顔があった。

なにより彼の瞳が力強く訴えてきた。


「損はしないと思うぜよ?彼氏がこんなに格好いいんじゃから。」

『!…ふ、ふつう自分でそういうこと言わないでしょ。』

「もし俺が明良先輩を裏切ったら――大人しく殴られちゃる。」


笑いながら言う雅治の言葉に動揺した私は目が泳いだ。

もし、なんて仮定で話をしてほしくなかった。


「じゃけ、もし俺がこの気持ちを7年貫いたら明良、そん時は――」


雅治がその続きを夢で語ることはなかった。

なぜなら、私の睡眠を妨害するかのように目覚ましが鳴り響いたのだ。


「明良ー起きんしゃい?遅刻したら笑いもんじゃよー?」


さらに雅治にも起こされ、完全に目を覚ました。

もう少し、夢の中にいたかったなんて思いながら、後ろ髪を引かれる思いで身を起こした。


『雅治?』

「なん?」

『大好き。』

「…朝っぱらから嬉しいこと言うてくれるのう。(寝ぼけとうの可愛いんじゃけど、今から結婚式じゃから我慢我慢。)」


あの日、雅治の約束故に私は幸せで約束を果たした雅治の忍耐故に今、もっと幸せになろうとしていた。


「明良、7年前の言葉。覚えとう?」

『え?7年も前の言葉でしょ?』

「7年。ちょうど今日で7年じゃ。」

『あ…』

「大人しく俺の花嫁になりんしゃい?」





恋に終わりなし
私はこれからもきっと彼に恋をする





** END **
#2008.5.12

仁王の純愛もいいv



あきゅろす。
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