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いつか甘い関係に


学校帰り、幼なじみの丸井ブン太と二人で帰路を歩いていたときのこと。

闇が垂れ込めてきた。

朝、ご挨拶した太陽さんの姿はどこにも見あたらず、鼻先を冷やすような冷たい空気に逃げていったみたい。


「お。ツバメが飛んでる。」


ブン太が指を指した先には確かにツバメが数羽飛んでいた。

それを見たブン太はさらに呟いた。


「雨降るかもなー?」

『えーやだなー』


詳しくは知らないけどツバメは雨が降る前、虫を捕まえるのだとか。

雲行きがかなり怪しく、見れば見るほど嫌な予感がした。


「じゃあな、明良。また明日ー」

『あ。バイバーイ。』


曲がり角でブン太に別れを告げ、一人でさらに帰路を進んだ。

自宅に着く途中、カラスの群に遭遇した。

ますます嫌な予感がして、足を早めた。


『ただの雨ならいいんだけどさ、ただの…』


真っ暗な家を前にしてさらに嫌な予感がした。

玄関に入って放った言葉は静まり返る家の中に響くだけだった。

家の中に入り、食卓テーブルを見ると置き手紙がある。

置き手紙の内容を見なくても家族がいないことくらいわかる。


『タイミング悪いよ!』


恐らく母の明良は部活だから、の一言で家族は外食に出たのだろう。

一緒に行きたかった、なんて普段なら言えたけど今はそれどころではない。


『……』


カーテンを閉めようと窓に近づいた時だ。

目の前が真っ白になるくらい強烈な光を浴びた。

そのすぐ後に家が揺れるような爆音のような音が聞こえた。

雷だ。


『やっぱりー!』


私は雷が大の苦手で両耳を塞ぎながらすぐ部屋に走り込んだ。

ベッドに入り、布団を被った。

ゴロゴロと空が私を脅し、虐めてくる。

涙が滲み、目を開けるのも怖くて怯えていたときだ。


「――!――ってばよ!」


布団をめくられ、急な空気の温度変化に身震いして眼をうっすらと開いた。

そこには懐中電灯で私を照らす人がいた。

眩しくて顔は見えない。


「たく。鍵は閉めろっていつも言ってんだろうが!不用心にも程があるぜぃ。」


でも、声を聞いてそれが誰かわかるとすぐに相手に飛びついた。

抱きついたときにふわりと鼻をくすぐったのは雨と甘い香りだった。


「……はぁ、」

『ブン太、ブン太ぁ〜』

「雷がダメな奴なんて明良くらいだぜぃ?つか、抱きつくなってばよ!」

『ダメダメダメ!怖いの!』


雷がなるような雨の日は幼なじみのブン太がいつも駆けつけてくれる。


「仕方ねぇ奴ー」


ブン太はそう言って、私を優しく抱きしめてくれた。

恋人じゃないけど、ブン太が相手なら嬉しい。


『いつもありがと。』

「(人の気も知らないで抱きつきやがって。…ムカつくけど仕方ねぇな。)」


彼はいつも私に優しくしてくれるから私は彼が大事で、大好きだ。

私はいつまで彼の優しさに甘えていられるのかな?

でも、今はこうして抱きしめ返してくれるから、まだ許されてるんだよね?

いつか、ブン太に好きな人が出来たら、私は一人で雷に耐えなくてはいけない。

いつか私に恋人が出来たら、雷が鳴る日に来てくれるのはブン太ではなくなる。

だからずっとこのまま、こんな関係でいたいと思うんだけど、それ以上を求める自分もいて――考えてるうちに、


『ブン太、』

「んだよ?」

『あの、ね?』

「……ん?」





いつか甘い関係に
ブン太が好きだと気づいたの





** END **

#2008.5.9

來恋は雷大好きですv



あきゅろす。
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