帰らない日々
助けて、と言いたくても声にならない悔しさと跡部を拒絶すると同時に嫌悪の気持ちが涙となり表れる。
「声でも出してみろ。隣で授業してるヤツらに聞こえるぜ?」
妖艶に笑う跡部が怖い。
なぜこんなことになったか自分でもわからない。
「明良、おまえは誰のものか言ってみろ!」
『あ、…とべ…の。』
「あーん?違ぇだろ?」
『…け、景吾の。』
「わかればいいんだよ。」
胸を揉まれ、突起を摘まれ、口の中で転がされる。
体はビクビクと反応はするけど、恐怖から強ばっていた。
この生徒会室の生徒会長用の机の上で、一体何人の女の子が愛の欠片もない跡部に自分のすべてを見せたのだろう?
「今なに考えてやがった?」
『なにもっ、』
「嘘言うんじゃねーよ。また彼氏のことでも考えてたのか?」
『だから!侑士は彼氏じゃな「ならなんでキスしてた?」
『それは……』
私は跡部の玩具。
気に入らないことがあればあたしは叩かれたり、犯されたりする。
そんな関係になったのは最近の話。
信用してた跡部に部室で急に押し倒されたのが始まりだった。
「言い訳があるなら聞くだけ聞いといてやる。」
『……侑士と学園祭のステージ発表の劇の練習してたの。』
「練習でキスねぇー…」
『でも、ガムテープ越しに…っ!』
言い訳してもしなくてもあたしの運命は決まっていた。
「お仕置きだな、」
『や、やだっ、』
「抵抗すんな。てめぇは俺の玩具だろ。」
『ッ、……んなの…やだよ、やだ…』
泣いても抵抗しても、跡部は私を犯す。
下着を脱がせ、足を広げ、秘部を見てニヤッと笑う。
十分に濡れてもいないのに、彼は熱く反り立つ自身をナカに無理矢理ねじ込む。
『――――ッ!!』
痛みに耐え、グッと咬んだ唇は切れ、鮮明な色をした血が口の端から滴る。
「おまえがほかの男なんか見るからだろ!?」
『ちがっ、私は―――』
こんなのはイヤ。
無理矢理犯されるなんて……
『痛いっ!!』
濡れてもいないのにピストン運動をする跡部のせいで膣内は熱く炎症を起こし始めていた。
『もうやめてーーー!!』
隣で授業をしていることなど忘れていた。
ただ、助けてほしくて叫んだ。
『跡部、やめて!』
「……無理矢理でもねぇと明良を手に入れられなかったんだよ、やめるわけには『こんなの間違ってるよ!』
「……確かにそうだな。」
『跡部、私はこんな跡部が好きなんじゃない!!』
「あん?」
『好きだった。わがままだけどたまに優しくて…笑っていた跡部が…好きだった。』
「でももう、引き返せねぇよ。明良にここまで恐怖心を与えちまったからな。」
私は手を伸ばしてきた跡部にまたなにかされるじゃないか、と身を震わせた。
「悪かった。明良がそんな風に感じてるとも知らず――最低だな。」
『跡部……?』
跡部はいつになくあっさり身を引くと適当に身なりを整えた。
そしてドアに向かって歩いていく。
「明良、自由だ。」
『え?』
「もう、束縛なんかしねぇよ。じゃあな……」
『待って跡部!』
引き留めてどうするの?
なにもできないのに―――
バタンと音を立てて閉められた扉。
私と跡部の間にはいつの間にか頑丈な扉のように隔たるものがあったんだね。
『返して……私の好きだった跡部を返して!返してぇぇぇえ!!』
あの日々へは帰れない。
優しい木漏れ日の下で二人、笑いあっていた日々は戻らない。
『跡部!外に行こう?』
「外?」
『風があって涼しいの!そこでサボり。昼寝しよう?』
「良いぜぇ?膝枕してくれんならな。」
『え〜…』
「イヤなら行かねぇ。」
『一人で行くの寂しいもん。一緒に行こう?』
「はぁ、仕方ねぇな。」
『やった!』
楽しかった会話を思い出せば悲しみが溢れるだけ。
一緒に過ごした場所の景色は灰色へと色あせる。
私たちの心は錆び付いたのだ―――
『あ、とべぇ……跡部っ!!』
帰らない日々
彼を苦しめた原因全てを私は憎む
** END **
#2007.6.5
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