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君とずっと…


彼女の体の異変に気づいたのは高校を卒業してからだった。

俺は明良にどんな事があっても想い続け、愛し続けると誓った。

例え、この世界から明良という存在が消えてもその思いは不変だと信じていた。


「明良さんはあと半月、いや…それより早いかもしれません。」


しかし、医者から告げられた恋人の余命の宣告を聞いて全身が震えた。

冷たく言い放たれたその言葉に明良の親、親戚、そして俺は話す気力を失った。

誓ったことどころか明良と出会ってからの思い出すべて記憶から消し去りたいとまで思った。


未だ、明良本人は何の病気か分かずベッドの上にいるのだろう。

なんて残酷なんだ。


明良の病室に戻ると彼女はテレビを見て笑っていたが帰ってきた俺に気づき満面の笑みを浮かべ、迎えてくれた。


『おかえり、景吾。』


笑ってる顔を見れば見るほど悲しくなるが俺はいつでも笑っていないといけない。

そうは思うが余命を告げられた手前、言葉に迷っていた。

ただいま、ということさえ出来ずにいたほどだ。

明良はなにを思ったのか俺の表情をジッと見つめた末、テレビを消して俺の顔をのぞき込みにきた。


『景吾?すぐ、絶対元気になるから。そしたらさ……いっぱい遊ぼうね!!』


見た目は元気そうだが、その内では何が起きてるか分からないなんて怖いと思った。


「あぁ、明良が元気になったら一緒に暮らすって約束したしな。」

『そうだよ!まだ死ねないんだから!』


なにも考えずに出た言葉だったかもしれないが明良の“死”というのはすぐそこまで来ていた。










確実に明良の体は病に蝕まれていった。

余命が告げられ、季節が変わったとき恐れていた事が現実となった。

緊迫した様子で明良の親が電話してくるやすぐに明良の元を目指した。


「明良!!」


俺が入った時には彼女の親や友人で病室が埋め尽くされていた。


『…け…ご?』


青白い顔の額には汗が滲んでおり、呼吸は通常よりゆっくりで顔が窶(やつ)れていたようにも見えた。


「……俺はここにいる。安心しろ。」


そうは言ったが実際、自分の声は不安と恐怖故に震えていた。

彼女の手をしっかり握り、泣かないように唇を噛みしめていた。


そんな俺を見て明良は口を開き、こう言った。


『景吾……もう一つ…約束して?』


苦しそうに言う彼女を見てただ思うのはこれだけだ。


“出来るなら治してやりたい”

“出来るなら体を交換してやりたい”


思えば思うほど胸が痛むだけで悔しさが増し、出来るわけないことなのに自分の無力さを憎んでしまう。

しかし、愛する人の姿を見ているとそう願わずにはいられなかったのだ。


『…簡単な、ことだよ…』


そう言った明良は俺にとって最も難しい約束をした。

そんなこと、辛くて今の俺にはとても出来るわけがなかった。

しかし、辛いのは明良本人。

彼女からの最後の願い、俺はちゃんと守りたいと思った。


「……わかった。約束する。」

『うん…ありがと…け…ご………』


虚ろな目で俺を見据えるその表情を見た瞬間、涙が出そうになった。

明良の輝く瞳を二度と見ることがないと感じたからだ。


『け、いご…あいして…る――』


そう告げられてから間もなく、明良は苦しみ始めた。

せき込み、苦しみや激痛に耐えながら明良は必死に生きようとしていた。

辛いのは明良だから、健康な俺なんかが涙を見せてはいけないと思いながらも涙は流れていた。


『っ…!…っ!………――』


その日、16時01分。

苦しみながら明良は息を引き取った。


「…明良……明良ー!!」


何度呼んでも返事は返ってこない。

それでも呼び続けた。


「…約束、果たせなかった…!果たせなかったぁぁああ!!」


彼女との約束を最後の最後まで果たせなかった俺は泣き続け、嘆き続けた。

俺は明良との約束を何一つとして果たせたものがなかったからだ。

約束を果たしてやりたかった。


「明良。おまえがいないんじゃ俺は少しも笑えねぇよ…」


それでも彼女に笑うと約束したのだ。

いつか――果たさせてくれ。





君とずっと…
笑っていて?私も笑うから、





** END **
#2007.7.24
(亜咲との合作)

#2008.5.1


俺はもっと彼女を理解してやりたかたったと悔やむが、わからなくてよかったのかもしれないとも思う。

もっと苦しみを理解していたなら、彼女になにもできない無力さと空虚さを痛感していただろう。

そんなことを悶々と考えるより、これからは前向きでありたい。

ひとたび立ち直ったなら、彼女が願うことを精一杯してあげようと思う。

この約束に関して完結はさせない。

彼女を思うことを忘れたくはないから。

――跡部景吾





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