ごめんと言わせて
『景吾なんか大っキライ!!』
「俺だって明良みたいなヤツ願い下げだバーカ。」
『出てって!二度と顔見たくない!』
彼氏と喧嘩をした。
いつもの軽い口喧嘩ではなく、恋人という関係が揺るがされる喧嘩。
「今まで我慢しておまえの隣にいてやったんだ。感謝しろ。」
そう言った景吾には近くにあったクッションを投げつけてやった。
ヌイグルミ、箱ティッシュ、丸めた春コート、本なんかを兎に角、手当たり次第に投げた。
彼はなにも言わずに部屋を出ていった。
『けい、ごなんか…』
涙を拭って先のことを思い出すとまた涙が滲み出た。
景吾があんな風に感じていたなんて知らなかった。
「指輪をしてるかなんかで恋人がいるいないを判断するなんて間違ってんだろうが。指輪なんか大切だ、っていう奴の気が知れない。」
たまたま雑誌にペアリングが載っていたから指輪の話題になって、価値観の違いから大きな喧嘩になっただけ。
『景吾なんか……』
ペアリングを全否定された私の乙女心はズタズタになった。
だけど、ショックだったとはいえ、大好きな景吾にひどいことを言った。時間が経てば経つほどそう思うようになり、携帯を眺めた。
『また明日になればいつもみたいに笑って話が出来るはず。』
そう自分に言い訳をした。
立ち上がって物を投げたせいで散らかしてしまった部屋を片づけ始めた。
投げた中にあった本を本棚に戻すとき、目に付いたのは一つの写真立て。
仲良さげに並んで笑顔をカメラに向けている自分と景吾の写真が飾られていた。
二人で写るのはその写真だけではない。
『……』
見れば見るほど二人の関係の絆の深さを理解出来た。
探せば探すほど景吾から貰った愛や大切な思い出が見つかった。
『……景吾、』
夕日が沈み、薄暗くなった部屋の中で独り涙を拭い、鼻をすすった。
「あら、景吾くん。電気も付けずにリビングでなにしてるの?明良はどうしたの?」
「今、連絡待ちなんです。」
「連絡?」
「ちょっと喧嘩して、」
私は先に見やった携帯をすぐ手にとって景吾の携帯に電話をかけた。
「あ、きた。」
「苦労かけるわね景吾くん。」
「いえ。明良が好きだからそんな風には思いませんよ。」
何度もコール音が鳴り、“出てくれないかもしれない”という不安が募っていき、空しさから涙が溢れていく。
しかし、少し後に景吾は電話に出てくれた。
「はい?」
『あ、景吾?あの、ね?』
「あぁ。」
『あの、私、景吾に言いたいことがあって…』
「なんだよ?さっきの続き以外なら聞いてやるよ。」
『うん、私――大切なのは形じゃなくて見えない実体ってことわかった。』
「それで?」
ごめんと言わせて
大嫌いの言葉を訂正させて?
** END **
2008.4.27〜
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