遅すぎた告白
一言、好きでした、と伝えるだけで良かった。それだけで満足できたはず。
いや、嘘だ。
満足できっこない。綺麗ごと、負けず嫌いなだけだ。ずっと好きだった先輩は目の前であっさりと連れ去られた。それをただ見ているしかできなかった俺はなんて惨めで無力なんだろう。
「明良先輩、」
『ん?どうしたの、赤也。』
「……仁王先輩とは順調ですか?」
なんてこと聞くんだ俺のバカ。失恋の傷をえぐりたいのか?それとも塩やカラシを塗り付けたいのか?
『うん、まぁまぁ。』
嬉しそうに笑っちゃって。心底後悔するが後の祭り。俺はなによりっスね、と言う。先輩にあわせて言うしかなかった。
明良先輩とは帰りのバスが同じ。登下校時が被るのは嬉しい。だが、片思いなだけあって辛くもある。ただ、彼氏の仁王先輩の家が俺らと真逆なことには感謝する。
『なんか今日の赤也は口数が少ないね?どうかした?』
この帰り道、彼氏がいる先輩だけど、俺と先輩が過ごす時間は誰にも譲らない。この時間は仁王先輩が知らない時間であり、それは俺と明良先輩のもの。これから先もこの帰路の時間は先輩と俺だけもの。
「明良先輩?」
『ん?』
「もしも、俺が仁王先輩より先に告ってたら、付き合ってくれました?」
ダメ元で聞いたのに俺は先輩からの返事に落胆してしまうことになった。
『赤也のこと嫌いじゃないからね、』
「そ、そうだよな!早くに告ってたら先輩は俺を見て、好きになってくれたかもしんねぇよな!」
感情を悟られないように軽いのりで言う。それに対し、明良先輩からの返答を聞いて、死ぬほど悔しかった。自分の弱さに吐き気がした。
『赤也が相手ならたぶん……ううん、間違いなく好きになってたよ。』
遅すぎた告白
ああ、神様、時を戻す方法ってないんですか?
** END **
執筆/2007.10.4
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