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続・ビー玉に願い事を


忘れていたわけではない。

だが、12年前の話。

日常が忙しくて、思いにビー玉と少女の記憶が上ることがなかっただけだ。


「……ビー玉?」


足下に転がってきた青いビー玉を見て思い出せた。

幼い頃、近くの公園で出会った女の子との記憶を――


「あとべはおぼっちゃまだからどろんこあそび、できねーだろ!」


宍戸や岳人と一緒に遊びたかったのに洋服が汚れたらいけない、という理由でいつも仲間に入れてもらえなかった。

俺はいつも噴水に腰掛けてみんなを見ているだけだった。

そこで明良と出会った。


『おちちゃうー!たすけてー!』


俺が腰掛けていた反対側で噴水に落ちそうになっていた一人の女の子を振り返り見て、すぐに助けに向かった。


『たすかった〜』

「バカか?みをのりだすからだろ。」

『みをのりだす?』

「どうせのぞきこんでたんだろ?」

『なんでわかるの?』


目を輝かせた自分と同じ年くらいの女の子を見て、顔を赤くした。

初恋だったのかもしれないな。


「なにしてたんだ?」

『あのね?なにかここでひかったの、』


明良が指を指した場所は確かになにかが光っていた。

俺は袖をめくり、噴水の池の中に手を入れた。

少なからず、女の明良より腕が長いと思ったわけだ。


『とれる?』

「……とれた!」

『ほんと!?』


手にしただけでそれが小さな球体だとわかり、明良に手渡した。

それが青いビー玉だった。


『きれい!ありがとう!』

「いや…」


たかがビー玉ごときで喜ぶなんて、と思う反面、小さな球で喜べる純粋さを羨んだ。


『まるできみのひとみみたい!』

「あおいから?」

『うん!キラキラしてるし!あ、きみ、おなまえなんですか?』

「ひとのなまえきくまえにじぶんのなまえ、」

『あ、早苗明良です。』

「おれはあとべけいご、」

『けいごくん、ありがとう!』

「それはさっききいたぜ。」


照れ隠しにツンと鼻先を高くあげてそっぽ向いた。

しかし、明良は尚、嬉しそうにしていた。


明良に会えたのはその日、一日だけだった。

それでも、可愛らしい女の子だと思ったせいか、記憶に残ったのだ。


『あの、すいません。それ、私のなんです。』


ふと聞こえた声に一瞬で引き戻された。

ゆっくり振り返るとそこにはストラップの主がいた。


「それ、手作りか?」


青いビー玉を今もあの時の女の子が保って、持っているとしたら――


『はい。』

「……ビー玉。誰にもらった?」


あの時の女の子が目の前の女だとしたら――


『12年前に会った男の子からです、』


あの時の恋心は再び生き返るだろうか?

でも、どうやって?

疑問の答えを得る前に発言した自分自身驚いていた。


「――私信だ。早苗明良も跡部景吾のところにくるように。俺と同じ瞳の色のビー玉持ってな。」


あの時のまま恋心を呼び起こさなければ美しいまま記憶の中で眠り続けるのにバカだな俺。


「(明良が来たら――)」


なに乙女みたいなこと考えてんだよ。

来るかわからない相手を待つ自分の鼓動が緊張している。

そんな自分に呆れた。


でも、もし明良が俺のところに来てくれたなら――


『あの…跡部くん、居ますか?』

ビー玉を持って来たなら――


「12年ぶり、明良。」

『ビー玉の男の子だよね?』

「噴水に落ちかけた女だろ?」

『あれは…!』

「はいはい。あれを拾わなければ俺らが再会することはなかったしな。」

『……そ、だね。』

「俺の初恋は違う女だっただろうよ。」

『うん。……え?』

「あー鈍くさい女に俺の初恋持ってかれた。」

『鈍くさいだなんて言わないでよ!』


この恋は勢いを増していくだろう。

俺はこの春、初恋の運命に賭けてみた。





ビー玉に願い事を
12年前の恋が今、再スタートした





** END **

2008.4.11
お約束の続編でしたv



あきゅろす。
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