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過去と傷跡


傷が出来た。

その傷口が乾くとかさぶたが出来た。

かさぶたがはがれ落ちる頃、ちょっとばかり期待するもの。

“治るかもしれない”

しかし、かさぶたがはがれたとき、


『ブン太ー彼女と別れたんだって?』


傷跡がうっすら残っていた。

幼なじみの明良の発言でわかるだろうけど、俺の傷とは失恋だ。

時が経てば綺麗に治り、なくなる。

そうすれば、失恋で胸を痛めた時の記憶が心に上ることさえないと思っていた。

しかし、傷跡が残った。


「…仕方ねぇじゃん。」

『なんで?ちゃんと気持ち伝えた?』

「……」

『まさか伝えてないの!?素直に“はい、さようなら”って言ったの!?』

「だったらなんだよ。」


明良と話をしていると傷が痛む。

まるで治った傷跡をつつかれてるみたいだから。


『“別れたくない”ってなんで言わなかったの!?』

「仕方ねぇんだって。そういうときもある。」

『やれるだけやるのがポリシーなんじゃなかったの!?』

「諦めも良くないとな。」


本当は傷に障ってほしくなくて、納得しているように言う。

だけどもちろん、彼女と別れたかったわけではない。


『そんなのブン太らしくない!』

「明良は俺のなにをわかってるつもりなんだよ!」

『……』

「知ったような口利くな!」

『ご、ごめん…一番辛いのはブン太だもんね。』


明良に当たるなんて最低だ。

俺を心配してくれてんのにな。

だけど苦しいから放っておいてほしいんだ。

下手に優しくしないでほしいんだ。


「悪い、デカい声なんか出して…」

『ううん。』

「……俺、平気だから。」


弱々しく口から放った言葉を聞いて明良は俺の手を握った。

何も言わずに。


『ブン太。我慢しすぎると疲れちゃうんだから、無理しないでね。』


明良の優しさがしみていく。

まるでなにかを溶かすように。


「……ホント、明良ってよ?」


明良を抱きしめて誤魔化した。

自分の頬を伝う涙が見られないように、泣いてしまいそうになった自分を隠すため。


「お節介だな、」

『…ごめん。ごめん、ブン太。』


明良はそれ以上なにも言わず、優しく俺を受け止めてくれていた。

よくわかったはず。





過去と傷跡
いつまでも俺を苦しめるもの





** END **

#2008.3.28

気持ち沈んでるときって意外とましな失恋夢が書けるのはなぜ?



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