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try to try!


桜が満開で春を感じさせる、そんな時期に中等部時代の子供臭さが抜けぬまま高等部の制服に袖を通す。

まだ成長すると見越した母の指示で少し大きめの制服(基準服)を購入したため、体に馴染まず、何となく風通しが良い。


『行ってきます!』


気候が良いため、機嫌良く家を飛び出し、学校へ向かった。

高等部でも1年生。新しくなにかに挑戦したい気持ちで溢れる。

私は勉強や委員会にバイト、ちょっと化粧なんかも頑張りたいと気合いを入れていた。


学校の教室へ向かう途中の階段で少し違和感があるけどよく知っている後ろ姿に目が留まり、声をかけた。

幼なじみの向日岳人と腐れ縁に近い関係である跡部景吾だ。


『おはよう跡部に岳人!』

「ん?あ、おはよう、明良。」

「……どうしたその顔。」

『どうしたもなにも、ちょっと化粧してみた。』

「へー?」

「…ハッ、」


明らかにバカにしたような跡部の笑い方にプチンとくる。

何か文句でもあるわけ?と睨みを利かせて尋ねた。


「生意気に色気付きやがって。」

『悪い?いいじゃん!高等部入ったら彼氏ほしいと思ったの。だから!』

「可愛いからいいんじゃね?」


そう私をなだめるように言ってくれた岳人の優しさと気遣いが嬉しかった。

単純な私はすぐ満足した。

階段を三人で上りきった時、私はさっき感じた違和感に気づいた。


『岳人…もしかして身長伸びた?』

「おう!」

『(なんか私が知らない人になっちゃったみたい。)』


あんなに子供臭かった幼なじみが春休みの間に少し大人っぽくなった雰囲気になっていて驚いた。


「そりゃあ、身長伸びないと困るって!彼女ほしいもん。じゃ、俺の教室ここだから。」

『うん、またね。』


ずっと一緒だった幼なじみが男の子から男の人になりつつあるのは嬉しい反面、寂しい気もした。

岳人がいなくなると跡部と二人きりになり、会話が途絶えそうになる。

気を使ってかわからないが跡部が口を開いた。


「早苗、高等部でも男テニのマネージャーするだろ?」

『化粧品とか買いたいからバイトしたいし、恋もしたいし。だから高等部ではテニスバカな方たちにはついていきません!』


そう返答すると跡部も負けずに言い返してくる。

私たちはいつも言い合いの喧嘩になる。


「化粧しても間抜け面は変わらないんだし。マネ、やれよ。」

『失礼な男!!』

「だいたい、化粧なんかしなくても早苗はそのままで十分なんだよ。」

『…は?』

「は?って…何回言わせる気だよ。早苗はそのままが可愛いって言ってんだよ。1回でわかれバカ、」


今まで跡部が私を褒めたことがない。

だから、そう言われてなんだか嬉しくて、意味も分からず鼓動が速まる。さらに頬が熱を帯びる。


「…だから化粧品買うためにバイトするつもりならマネ、やれよ。」


何となく、だけど。


『……う、ん。』


跡部に誘われたから高等部でもマネをやろうかな?と思って頷いた。

でも、それだけじゃない。

恋をしようと決めた春、違う目的故に氷帝学園高等部男子テニス部マネージャーをしようなんて思う自分がいた。

見れば見るほど跡部が格好良く思える。


『で、でも!バイトもしたいからする。』

「はぁ?マネにバイトなんか無理に決まってんだろうが。」

『…心配してくれてんの?』

「部に支障を来すから言ってんだ。」

『うわー!やっぱりバイトする!!マネなんかするもんか!』


恋してやろうじゃない。

跡部を彼氏にしてやろうじゃん。





try to try!
恋愛初心者の危険で無謀な恋の始まり





** END **

2008.3.24
タイトル意味
「ためそうとしてください!」




あきゅろす。
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