心を料理していた
4月から高校生ということもあり、一人暮らしを始めた。
親に心配されながら、新しい生活の幕開けとなった。
なにせ料理が問題なのだ。
『てい!やっ!』
卵焼きをひっくり返すのにそんなかけ声が必要なのだろうか、と疑問に持つのがふつうなんだろう。
でも、私にしたら卵焼き一つ作るのもかなり難しい。
見た目は悪くても食べれたらいい、なんて安易な考え方だったりする。
でも間違ってた。
「明良…これは食い物なのか?」
『……』
学校でお弁当を食べていた私に襲いかかる言葉。
声の主は同じクラスの跡部景吾。
ついでに言うと中等部でも同じクラスだった。
「教科書を立てて食ってるからなにを食べてんのかと思ったぜ。クククッ、」
完璧な味と盛りつけのされた料理しか食べたことがないおぼっちゃまにこうも言われたら腹が立つ。
『文句あるなら食べてみなさいよ!味はいいんだからね!』
悔しいから笑っている跡部の口の中に卵焼きを投げ込んだ。
するとむせていた。
私の卵焼きをバカにするから逆襲に遭ったんだ。
『おいしいでしょ?』
「見た目が良けりゃな。」
『つくづくムカつくわね!』
「悔しかったら俺が満足する弁当作って来いよ。」
『作ってくるよ!その代わり、おいしかったら謝りなさいよね!』
彼の口車にうまく乗せられ、それからの日々、気合いを入れて料理に励むようになった。
すべては跡部をぎゃふんと言わせるため。
だから、心地よい春の日差しを感じたり、桜の開花でピンクに色づく空を眺めたり、団子にかぶりつきながら春ですね〜とのんびり過ごす時間も春ボケする余裕も私にはない。
しかし、いつしか変わっていた。
『もっと早くからママに料理教えてもらえばよかったな〜』
いつ気づくだろうか。
跡部の分のお弁当を作っているとき、自分が楽しそうに作っていること。
跡部が毎朝、お弁当のメニューを聞いてくるのを楽しみにしていること。
跡部の憎まれ口に包含されている意味を悟るときの嬉しさに頬をリンゴ色に染めていること。
跡部が喜ぶようにお弁当に入れるおかずの本まで買って研究していたこと。
『あ!もうこんな時間!?学校行かなくちゃ!』
料理に関してのすべて“彼”が要因となっていた、といつ気づくだろうか。
『跡部〜お弁当。』
「……ハンバーグか?」
『ハート型にしてみたの!』
「割れてるがな、」
『うそ!?』
「うそだ。」
『騙したー!』
「騙される方が悪い。」
まだまだ料理の腕を磨き続けないと彼は満足しないみたいだけどね。
心を料理していた
いつかお互い恋していると気づくだろう
** END **
2008.3.24
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4月『挑戦』
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