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ホンマもんの好き


――ドクンと大きく心臓が打つ。

早くその場から立ち去れ、と言わんばかりに速まる鼓動。

苦しくなる。



付き合って3ヶ月経つ私たちに別れのシグナルが鳴り始める。

目の前には忍足侑士と違うクラスの女の子が仲良さげに話をしている。


「よかったわぁ〜…同じクラスやからふられたら過ごしにくいやんかな?」


そう笑いながら私の返事を受け止めてくれたあなたはどこへ行ったの?


「今日も暑いなぁ〜?」

『アイス食べたーい!』

「それはねだってるん?」

『だって、お金ないもん(笑)』

「しゃあないなぁ。今度奢ってな?」

『ありがとう!侑士、大好きー!!』

「好き、なら俺も負けへんで?めっちゃ好きやで、明良?」


そう笑いあっていた昨日はただの思い出にもう変わってしまったのか?


『(あぁ、もう飽きられたんだ。)』


そう思ったときだ。

ふと浮かんだのは彼の友達である跡部の言葉。


「軽いお遊びじゃねーの?」


侑士に告白された3ヶ月前に聞いたことを今更思い出し、涙が溢れた。





結局その日の授業に出る気にはなれず、いても仕方ないと思い、帰路に就いた。

同じクラスで授業を受けるなんて度胸はない。


『…ゆ…しのバカ。』


目の前が歪んで見えなくなって、私は立ち止まった。

と、いうのは涙が溢れたのだった。


「こんなところで何してるん、明良?」

『ゆ、侑士!?』

「なんや泣いてたん?」


聞きなれた声を聞き、思わず振り返るが一瞬で表情が曇った。

だって浮気現場を見たんだからあたりまえでしょ。


『侑士のバカ!跡部が言った通り、遊びだったんだ!!』


振り下ろした手はあっさりと捕らえられ、悔しさが募る。


『侑士なんか嫌い!もう、こんな男別れてやる!』

「そない怒らんといて?」

『怒るな!?浮気してたのどこのどいつよ!!』


ヒステリックに叫ぶ私を抱きしめ、侑士は余裕で笑っていた。


「浮気現場見てたん?」

『……見た。』

「それはヤキモチなん?」


黙って侑士の腕を振り払おうとした。

でも、鍛えられた腕を押し退けるなんて簡単ではない。


「明良、俺より他の男と仲良えやん?やから…ホンマに俺んこと好きなんやろうかって不安なってん。」

『……でも浮気した。』

「浮気やないってわかったら許してくれるん?」

『……相手が私の仲良かった子でかなり可愛いんだもん。浮気じゃないなんて言われても納得いかない。』

「ホンマに浮気やないん。信じて?」


切実に許しを請(こ)う姿を見て、私は甘くも許してしまった。

改めて、侑士が本当に好きなんだなぁって感じた。


「ごめんな、明良?俺が好きなんは明良だけなんや。なにが嬉しくてあんなヤツ…」


抱きしめて甘えてくる侑士。

そんな仕草を愛しく思う私が別れるなんて出来るわけがない。

そんな痴話喧嘩から数分後。


「明良がヤキモチ妬いた〜♪」

『恥ずかしいからやめてよ!』


私たちは無事に和解し、手を繋いで学校に戻った。

こんなことが二度とないように意志の疎通を普段から図るよう心がけます。

お騒がせ致しました。





ホンマもんの好き
明良、俺がものすごいヤキモチ妬きなん知らんかったん?





** 以下オマケ **


浮気やないって証明したるわ。と、言う侑士に連れてこられたテニス部の部室からは賑やかな笑い声が聞こえた。

彼は部室の扉を開き中の様子を見るように促す。

そこには――


「襲われかけただぁ?」

「ぶはは!激ダサだな!」

「うっせぇ。つか、こんなの二度とごめんだ!冗談じゃねー!!」

「やべぇ!俺、マジでガン惚れするCー!」

「気持ち悪いこと言うなよジロー!」

「向日さん、そういう趣味があったんですね。」

「だぁ〜かぁ〜らぁ、違うんだっつの!!何回言わせんだ日吉!」

「そこら辺の女より可愛いじゃねーの。なんなら、俺様が娶(めと)ってやるよ。」

「…………………」


女の子かと疑うほどの可愛らしい容姿の向日がいた。


「あー!侑士ぃ(怒)」

「あ、見つかったわ〜」

「何とかしろよ!いつまで俺このままなんだよ!?」


怒りながら侑士に迫る向日だがはっきり言って迫力に欠ける。

だって、長い巻き髪のウィッグにスカート、黒いソックスにローファー。

あの長い睫には必要ないのにマスカラがついてるし。

どっから見てもただの女の子だ。


『え、じゃあ、侑士と手を繋いでたのは――』

「女装した岳人なん。」

『だって!』

「顔は見てないやろ?明良が見たんは背格好やったはずやもん。」


そう笑いながら言う彼を肘で突いた。

やられた。

氷帝のくせ者は侮れない。


「浮気やないってわかった?」

『…うん、』

「そら、よかったわ(笑)」

『なんでこんなことしたの?』

「明良にヤキモチ妬かせたかってん。その反応でホンマに好きかわかるしな?」


彼の腕の中が改めて心地よいと感じた瞬間だった。


「おい、侑士ってばぁ!イチャついてないで助けろー!!」


向日は女装させられて災難だったろうけどね。

笑っちゃいけないけど笑える。





** END **
#2007.6.22

NO.4444
美優紀さまへ

(タイトル変更すいません)氷帝のくせ者が墓穴を掘るようなことするわけない



あきゅろす。
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