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恋に気づいた


マネージャーである明良。

俺らは昔からの知り合いで名前で呼び合う仲。

いつもそばにいたから安心しきっていたのかもしれない。


『景吾。ミーティング始まるよ?』

「今行く。」


同じクラスだからなにかと一緒にいることが多かった。

明良にとって一番近い男は俺以外にいないと思っていた。


「あ、あの…明良先輩!」

『なに長太郎?』

「お話あるんですけど…今、平気ですか?」

『あ、うん。じゃあ、景吾。会議室は私たちが鍵締めて行くよ。』

「…ああ。」


嫌な予感はしていた。

呼び出しなんて大抵告白だし。

会議室から出たものの気になって窓から覗いていた。


「(覗きなんて悪趣味も良いところだよな。)」


良いことではないとわかっていたから罪悪感が襲う。

しばらく和やかな雰囲気で会話を交わしていた二人だが急に鳳が真剣な眼差しで明良を見た。

会話がはっきりは聞こえないから息を潜めていた。


「やり直せませんか?」

『……無理だよ、』

「明良さんさえその気になれば…俺に問題なんかない。まだ間に合いますよ!」

『二人で決めたことでしょ?どうして今更?』


隙間から漏れてきた会話に不安を募らせた。

知らぬ間に明良は鳳と付き合っていたのか?


『とにかく、その話はもう終わったでしょ!』

「あ、明良さん!」


会議室の扉が開いて俺は息が止まった。


『け、景吾…!』

「立ち聞きなんてして悪かった。」


なにも言わずに立ち去ることにした。

明良はよりを戻すつもりはなくても、鳳はまだ満足していないらしい。

気持ちが変わる前に明良へ告白すべきかもしれない。


「…明良さん、跡部さん完全に勘違いしてますよね?」

『う、うん。』

「訂正、した方がいいんじゃないですか?今の話、背景を知らないと怪しまれますよ?」

『でも、事情を話す義理はないよ。』

「……」


その日から明良と上手に接せられなくなった。

避けているつもりはなくても他人が見れば避けているだろう。

教室には出来るだけいないようにしているし、部活も始まるぎりぎりに着替えに行くし。


「(情けないもんだぜ。)」


なぜこんなに不器用なのか。

自分を恥ずかしく思う。


「今更気づくなんてな、」


自分の感情に気づいたのが遅すぎた。

自分を一番理解しているのは自分のはずなのに公開はどうやら理解していなかったらしい。


『こんなとこにいた!景吾ー。』

「…なんだよ?」

『話があるんだ。この間のこと、勘違いしてるかもって思って…』


鳳と明良の会話を聞いて勘違いするだなんて、珍しく動揺していたんだな、としみじみ思う。


『町内でテニスの小さな大会が開かれるんだけどそれで長太郎が一緒に出ないか?って話を前にしてて…私はテニスのセンスがないからって――』

「俺には関係ない話だろ?」

『え?あ、そうだけど…勘違いしてたらって思って。なんか避けられてる感じもしなくはなくて…』


自分の抱いていた恋心に気づくのが遅すぎたために恋は実らないと思い、拗ねていた。

でも、明良はわざわざ俺の誤解を解きに来てくれた。

嬉しかったわけだが素直になれず、突っ張ってみるのはただの照れ隠し。





恋に気づいた

これからこの気持ちをどうしよう





** END **
#2008.3.11

勘違い跡部に幸あれv




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