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また会いましょう


暖かい、暖かい春がくる。

名残惜しいけど恋人たちを寄り添わせる力を持つ冬に別れを告げなければいけない。


『雪が見れるようになるまでしばらくの間バイバイだねー?』

「冬になると嫌ってほど寒くなるんよ?」

『でも、私は嫌いじゃないよ。寒いけど綺麗じゃない?』


冬には冬しか出来ないことがあるし、と呟いた。

自分の到来を待つ人類のために地球上を移動する、冬。

そんな冬は私たちに別れを告げるのを惜しむのだ。

渋々、春へバトンを渡すラストスパートに。


『寒いっ!』


昼間は太陽のせいで春との共存を許すが夜は黙っていなかった。

空気を冷やし、風を巻き起こらせた。


『ねぇ、雅治んち寄っちゃダメ?』

「なんじゃ。またスープ目当てか?」

『ごめんー』


最近、昼間は暖かいからついつい薄着をしてしまいがちだけど夜は違い、冷たい風で体が冷えてしまうことがある。

その度に一人暮らししている雅治の部屋に転がり込む。

体を暖めたら帰る、なんて言って泊まったことがこの冬、何回あったかな?


「まぁ、俺はかまわんがな。」


雅治に了解を得、足早にマンションへ向かった。

部屋にたどり着くと中へ通してもらった。

ひんやりした部屋の中にポツンと置かれた簡易ストーブのスイッチを入れた雅治はタンスから服を引っ張り出してきた。


「これ被っときんしゃい、」


そういって頭から被せてくれたのは自分のセーター。

静電気を起こし、髪の毛がボサボサになったのは言うまでもない。

それでもその優しさが嬉しいからなにも言えなかった。

私にはかなり大きいそのセーターからは雅治のにおいがして気持ちが暖かくなり、ついつい微笑んだ。

ハッと自分の仕草に気づき、雅治を確認したけど当の本人はなにも知らず、インスタントのスープを作るためにお湯を沸かしていた。

そう時間が経たない内に雅治は二つのマグカップを持ってきてくれた。


「夜はまだ寒くなること考えて服そう考えんしゃいよ。」

『だって、春なんだからワンピース着たいじゃん?』

「まだ3月。」

『だってせっかく買ったんだもん。早く雅治に見てもらいたかったの。』


マグカップを渡さ、感謝しながら両手で受け取って口元へ運んだ。

隣に雅治が腰を下ろして窓を見やった。


「雪、ちらついとう。寒くて当たり前じゃ。」

『…ホントだ。』


結局、雪のせいもあるけど、居心地が良いためにその晩、泊まることにした。

また明日の朝、白い道路に二人並んで足跡を付けて歩くんだろうな、と思いながら夢の中へと落ちていった。


冬は雪を降らせた。

春がそれを邪魔するように地面に落ちてはその形を消した。


翌朝、白い道を歩けると少し期待していた分、いつもとなんら変わらない汚い色の道路を見て眉の端が下がった。


「名残雪だったか、」

『えー!?最後の雪だったの?』

「冬はまた来る。」

『まぁ、季節はメリーゴーランドみたいにグルグル回るからね。』

「珍しく発言が乙女チックやのう。」

『失礼な!』


空を見上げると雲一つない真っ青。

暖かな日差しに目を細めたその日はまさに春だった。

私はなんだか寂しいな、と呟いた。





また会いましょう
雅治と二人、あなたを待っています





** END **
#2008.3.1

暖かくなってきた今日この頃、な話



あきゅろす。
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