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上昇気流を求め


羨ましく思う。

何かに執着できることを。


「俺さ、小さい頃跡部ン家のセスナ機に乗せてもらったことがあったんだよな?」

『またその話?』


何度も聞きすぎて耳にタコが出来る、と言えば彼は苦笑しながら話を続けた。

氷帝学園で一番高いところ、屋上の貯水タンクの上に二人で上り、狭いタンクの上で二人並んで腰を下ろした。


「あれから、俺の夢は変わらない。ガキん時から空を飛んでみたいと思ってた。」

『スズメを見て“いいなぁ”ってよく言ってたぐらいだもんね?』

「うっせー!」


岳人は遠くを飛ぶ鳶(とんび)を見つけて指を指した。


「だってすげーじゃん?上昇気流を見つけて飛ぶ鳶なんかさ?」


羨ましそうに見つめる岳人はまさに夢見る少年だった。


「俺は鳥にはなれないから、違う方法で飛んでやる!」

『パイロットでしょ?本当に何回聞いたと思うの!?』

「別にいいだろー!?」


目を輝かせて夢を語る岳人に弾丸を一発お見舞いしてやった。


『パイロットは頭良くないと、』

「うっ、それを言うな!だから頑張ってんじゃん!?クソクソ明良めっ!!」


聞き飽きた話だけど、毎年成長する彼の話だから。

そう、目を輝かせる岳人を見ていると飽きなかった。


『じゃ、今年も夢に向かって頑張んないとね?』

「おう!!」


目標があるなんて良いな、と岳人の話を聞くたびに思う。

私は未だに――


「明良はまだ決まんねーの?」

『…うん、』

「そんな落ち込むなよ、な?」


頭をポンポンと叩く岳人。

励ましてくれて嬉しいはずなのに素直になれず、皮肉ばかりで可愛くないよね。


『あそこを飛ぶ鳶。あれが目標がある岳人とか跡部とか忍足だとしたら、私はこの辺から仲間が上昇気流に乗ってるのを見てるカラスだよ……』


電線にとまるカラスに視線を下げると岳人が手を握ってくれた。


「だったら、上昇気流に乗る俺らを見て、明良も飛んでくればいいだろ?やりたいことはいつも手探りなんだぜ?」

『手探り…?』

「俺らン所に来る途中になにか見つけられるかもだろ?それに明良に飛ぶ力がないなら迎えに来てやるから!」

『うん、』

「だから一緒に飛んでいこうぜ?」

『置いていかないでよ?』

「当たり前だろ!」


岳人は子供臭く笑った。


「明良にとっての上昇気流はなにかわかんねーけど、きっと見つかるから心配すんなよ!」

『うん!!例えやりたいこと見つからなくても岳人のお嫁さんになるって目標の上昇気流に乗れるかもだしね!』

「ッ、バーカ。」


体は小さくても心は人一倍大きくて、私を包み込む力を持っていて、いろんな考え方が出来て……


『岳人のそばにいれてよかった!』


彼は決して私を置いていかない。


『よっし、私の上昇気流!!絶対掴んでやるから待ってろよー!!』


私は遠くで飛ぶ鳶に叫んだ。


「それに、今出来ることをやれば十分だろ?」

『“その努力はいつか報われるから”でしょ?』


それは岳人の口癖の一つ。

彼女である私には彼がなにを言うのかくらいわかる。





上昇気流を求め
あなたが待っているところまで私を連れていって?





** END **


ある人から聞いた話をアレンジ。
鳶が上昇気流を見つける時は仲間が飛んでるのをまず探すってこと知ってた?


執筆/2006.9.12
加筆/2007.5.5



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