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1 あれから二人は


リョウがフランスに行く宍戸についていって5年が経った。

日本の空港には一人の男を待つ女がいた。


「こもも!」

「んあ、お帰りなさい!」


景吾の姿を見ると笑顔で駆け寄るのはリョウの姉、こもも。

アメリカにいた彼が一時帰国したのだ。


「今回は何日日本にいるの?」

「1週間だ、」

「相変わらずアメリカと日本を行き来してるわけだ(笑)」


父親との約束を景吾は守り、大学に行きながら仕事をこなしていた。

大学を卒業したからは仕事一筋で生活していた。


「これ土産だ。」

「ありがとうー!」


景吾はこももに小さな小包を手渡した。


「開けて良い?」

「あぁ、」


袋を開ければアメリカで人気があるネックレスだった。


「コレ、どうしたの?」

「取引先のヤツの娘が作ってんだよ。で、もらったわけ。」

「すご〜い。ありがと!」

「貰いもので悪いな、」

「ううん。」


景吾が日本に帰るときは必ずこももが迎えにくるのだった。

今の日本には彼を迎える女がこももしかいないのだ。


「今日はママ様は?」

「置いてきた。」

「なぁんだ(笑)」


リョウがいなくなり、落ち込んでいた景吾を支えるため、こももはただ無言で隣にいた。

そんなこももに景吾は少しでも恩返しようと考えてた。

しかし、なにをすればこももが喜ぶのかいまいち掴めなかった。


「今日は雅治に送ってもらったの。あ、そうそう、料理作ってきたからうちに来ない?」

「あ、あぁ。じゃあ、邪魔する。」

「よし来たぁ!」


こももはふと喜びの笑みがを浮かべながら景吾の腕を引っ張った。


「じゃあ早く早く♪」

「オイ、そんなに引っ張んな。」


景吾は急かすこももを見て子供臭いと苦笑していた。


「雅治ー」

「おぉ、来たか。跡部お帰りんしゃい。」

「よう、仁王。久しぶりじゃねえの。」

「今日は跡部が帰ってくるからってこももが朝から張り切っとったぜよ?」

「だって3ヶ月ぶりだもんね!」


こももは車に乗り込むとさっさとシートベルトを締めた。

車内にいるこももを見て景吾はドアに手を伸ばす仁王に声をかけた。


「仁王、こももは相変わらずか?」

「まぁ、相変わらずうちのモデルしとうよ。これがまた売れるん。」


仁王は自分が乗ってきた車の屋根をパンパンと叩いた。

真っ赤なスポーツカー。

それはこももの稼ぎ分で購入したものだった。

と言ってもこももは車の免許を取れるわけではないから仁王が代わりに運転するのだ。


「こももが選んだんよ。」

「良いセンスしてんじゃねぇか。」


景吾は笑いながら車に乗り込んだ。

そして後部座席からこももに声をかけた。


「好調なんだってな、こもも。」

「仕事?うん。」

「なにせうちの母さんが推して推してすごいんじゃよ。」


仁王の母親は化粧品会社の社長でこももは会社のイメージモデル。

マネージャー役を務める仁王と基本的に一緒に行動しているわけだ。

一人で歩かせたらいろいろ危ないことが理由。


「こももを化粧品のCMに出したらモデル業の依頼が殺到したん。」

「でも、こももはママ様の会社専用モデルなの、」

「学歴どころか人間歴が浅いからな(笑)やりたくても出来んわな。」


会話の間、仁王は車を颯爽と走らせ、あるマンションに横付けした。

こももと景吾が車から降りると窓を開け、仁王が二人に言った。


「じゃあ、車庫に入れて来る。」

「ドリフト禁止だかんね?」

「はいはい、」


仁王は適当に返事をすると車を発進させたのだがこももは不安そうに車を見送った。


「雅治ってばこないだドリフトして車庫に入れたの!擦らなかったからいいけど。」

「全く危ねぇヤツだな、」

「ねー?(笑)」


こももは笑いながら鞄から鍵を取り出した。

マンションの部屋まで案内すると景吾を招き入れた。


「どうぞ!」

「あぁ、サンキュー。」


景吾はこももの手料理が食べられると少し緊張していた。

こももの手料理を食べれるなんて考えもしなかったからだ。






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