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act.137『幸せを奏でる』
(こもも視点)


こももにもう一度、景ちゃんと向き合うチャンスをくれたのは子供たちだったんだね。

子供がいなかったら、こももたちが会うことはなかった。


「でも、もう大丈夫。」


景ちゃんから離れ、涙を拭って空を見上げた。

すると雲一つない青い空が広がっていた。


「景ちゃんの瞳と同じくらい綺麗な色。」


こももは今まで空を見つめられなかった。

空の色があなたを連想させるから。

でも、今はあなたに会えたから、辛かったあのときの気持ちを伝えられたから平気。


「下ばかり見て歩いたりしないよ。今なら、ちゃんと向き合える。」


利琥と向き直り、屈んで両手を広げた。

すると利琥は何も言わずに一歩ずつ、慎重に足を踏み出してくる。

こももはなにも言わずに利琥が懐に来るまで待った。


「…ママ、」

「利琥、あなたはママの大事な子供です。」

「……う、…うっ、うわぁ〜!」


泣き出した利琥を抱きしめた。

向き合わなくちゃ、という義務感ではなくて向き合いたいって意志に動かされてのことだった。

利琥が求めていた言葉を心から言うことが出来て満足感に満ちた。


「それで?」

「え?」

「跡部とはどうするんだい?」


利琥が落ち着いた頃、精市くんが尋ねてきた。

確かに景ちゃんに会って話をして感情的になったけど…


「どうするもなにも――過去のことはすっきりしたし。」


景ちゃんは終始無言を貫いていた。

ただ、こももたちをずっと見ていたみんなは今までなにも言えなかった分、爆発したみたいに言い始めた。


「これ以上、自分の神経を削る必要が果たしてあるのか、こもも。」

「こももと利琥の関係がぎくしゃくしてるせいで精神的にお互い疲れきっていたじゃろう。」

「子供のことも考えろよ。俺らじゃ父親にはなれねぇんだからさ?」


気持ちは確かにあった。

それにもう一度、最後に人間を信じてみたいと思ったことを思い出す。


「ママはいつも“景ちゃん”っていってた。」


今までその言葉で傷ついてたはずの利琥がそう言った。

抱いていた利琥を下ろすとこもものズボンのポケットに差し込んでた携帯電話を引き抜いて見せてきた。


「ストラップおそろいなんだろ?」


こももにもう一度、チャンスをくれたのは子供たち――特に利琥かもしれない。

こんなにも小さい体なのに景ちゃんを思わせる要素がたくさんあったから。

あなたを忘れられなかった。


「景…ちゃん、」

「……」

「もう遅いかもしれないけど……あなたを信じてもいい?」


今度こそ失うかもしれない。

そう思うと怖くて俯いてしまった。

返事を待ってみたけど彼からの返答は未だにない。


























最後に賭けてみよう。

























「もう一度、
あなたを好きになってもいいですか?」

























返事が怖い。

体が震えてる。

聞きたくない。

でも、聞かないと始まらない。

逃げ出したいけどもう逃げられない。

鼓動がうるさい。

























彼はゆっくり両手を広げていった。

























「バカこもも、
いいに決まってんだろ。」


























あのとき、あなたを受け止めていたらどうなってたかな?

辛い思いをしないで済んだかな?


「来いこもも。」


本当の愛を掴むため。

遠回りしすぎたね、こももたち――


「景ちゃん!」


その腕で抱きしめられて、“もう一度、恋愛しよう”と思えた。

この恋愛を最後にしたい。

願うはそのことだけ――





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