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act.135『親としての責任』
(跡部視点)


俺の目に映るのは木に登る自分によく似た子供。

その下には困っているこももたち。


「跡部は意外とナイーブなんだね。」


そんな風に笑う幸村に愛利は首を傾げていた。


「こもものバカヤロー」


こももが俺を遠ざけていた理由はわからないが俺の子供だったとわかった以上、目を背けるわけにはいかない。

俺はゆっくりこももたちの元へ歩きだした。


「利琥!いい加減にしなさい!!」


子供に怒鳴るこももより先に仁王が俺に気づいた。

一瞬、目を丸めたがすぐに呆れたように笑うと数歩後退した。


「ママは利一と愛利がいればいいんだろ!」

「そんなこといつ言ったのよ!?」

「だってママはおれが――」

「こもも、苦労してんのな?」

「「!」」


勇気を出して声をかけるとこももは肩を震わせた。

利琥に至っては驚き戸惑っているように見えた。


「(け…ちゃん…?)」

「(おれとおなじあおいめ…)」


こもも、辛かったよな。

俺にこんなにも似た子供を2年半に渡り、見守り育ててきたんだから。


「降りてこいよ利琥。ママを困らせたって良いことないぜ?」

「……うん、」


素直に降りてきた利琥を仁王が受け止め、抱き上げた。

それを見た利一が走ってくるなり俺を見てこう言った。


「すげぇ!利琥そっくりじゃん!!したらこのひとがおれらのパパなわけ!?なぁなぁ、ママー!!」

「……」


しかし、賢い利一はその場の空気を察して黙り込んだ。

シンと静まるとこももが口を開いた。


「なにか用?」


その一言で二度と会わない、と言われていたことを思い出した。

なんと言うべきか…

悩んでいると見るに見かねた仁王が静かに口を開いた。


「こもも、こんな偶然でもなけりゃ跡部と話出来んかったと思いんしゃい?」

「“こんな偶然”?」

「……」

「まさか、雅治が裏でなにかしたんじゃないの?」

「…さぁ?じゃけ、父親が誰かわかったなら跡部も黙ってはおらんじゃろう。」


そう聞いてようやくこももは俺と目を合わせた。

俺はこの場で疑問を抱いたことを尋ねることにした。


「こもも、俺の子供…産んでくれたんだな。」

「堕胎なんてできるわけないじゃない。」

「…それは仕方なくか?」

「この子たちは景ちゃんじゃなくて自分の子供でもあるもん。」

「なら、義務感からか?」

「いい加減にしてよ!!」


こももが声を上げ、怒鳴ると愛利が泣き始めた。

それを見たこももはすぐに愛利を抱き上げた。


「愛してなければ…育てられないよ。」


そう言ったこももはどこか切なくて、苦しそうで、泣きそうだった。

それを見た利一がこももの足下まで駆け寄ってきた。

しかし、利琥だけが遠くから眺めていた。


「…利琥、おいで。帰ろう?」

「やだ。」

「利琥!」

「ママはいつもないてる!おれがこのひとににてるからわるいんだ!!」


泣き叫びながらこももを睨む利琥はそれ以上、なにも言わないがなにかを嘆願しているようにも見えた。


「……こもも、利琥の世話に手を焼いてるなら俺が利琥を引き取ってやるよ。」


その発言を聞いたその場にいたみんなが困惑した表情を浮かべた。

俺は自分が父親だということを自覚しているつもりでそう言葉を示した。





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