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act.130『可能性と事実』
(仁王視点)


――3年前。

こももが嘔吐したあの日から俺の悩みは尽きなかった。


最近、生理が来たとこももから話を聞いたことがない。

その点、こももは前々から生理の周期が不定期だからそう心配はいらないが嘔吐したのが気になった。

妊娠してるんじゃないか、と不安に思った俺はすぐに柳生に連絡をした。


「こんな時間にどうしましたか?」

「のう、うちのこももなんじゃけど。今日、吐いたんよ。今、そんな風邪が流行っとう?」

「最近、嘔吐(おうと)を引き起こす風邪が流行っているとは父親から聞いてはいませんが?むしろ咳や鼻水が多いです。」


風邪の可能性もあったが柳生の話を聞いて不安が募った。


「……まさか妊娠?」

「え?こももさんがですか?」

「検査薬で調べてみるか。じゃけ、アイツになんて言えば…」

「待ってください!仁王くん、あなたの子供の可能性があるのですか?」

「バカ、俺はそんなヘマせんよ。」


ゴムをすれば必ず避妊できるわけではないが、妊娠したとなればゴムをしていなかった可能性が高い。


「もしかして跡部くん…ですか?」

「可能性は高い。今のこももが跡部以外とやったなんて考えられんしな。」


跡部がなぜきちんと避妊できなかったのか、理由をいくら考えてもわからなかった。

しかし、まだ妊娠と決まったわけではないのにこうも悶々と頭を悩ませていたところでなにも始まらない。

俺は柳生に協力を得ることにした。


「明日、こももを柳生んとこの病院(内科)に連れていく。だから、風邪かどうか診察ついでに尿検査で調べてくれん?妊娠してるかどうか。」

「父親に頼んでみます。」

「悪いな。あ、妊娠してるとわかったら俺にコソッと教えてくれたら助かる。こももにはまだ言えんから。」

「承知しました。早急に父親と話します。」


翌日、俺は病院にこももを連れていき、妊娠していることを知った。

しかし、生ませばいいのか堕胎させればいいのか、こももに伝えるか伝えないか、俺はどうすればいいかわからないまま、ひたすら悩んだ。


そして、ついに跡部が帰国する日になった。


こももはなにも知らず、空港で跡部の帰りをそれなりに楽しみにしとって…言うか言わないか悩んだ結果、話しておくことにした。

しかし、良く考えればわかる。

妊娠、それも跡部の子の可能性が高いことを今知ったらこももは笑わなくなるだろうから邪魔が入って正解だったのかもしれない。


「なにじっと見てやがる仁王。おかえりのひとこともなしに。」

「ん、あ…おかえりんしゃい、」


求められた言葉を言えば跡部は満足そうにしていた。

妊娠のこともあるし、ベッドインされる可能性は低くとも手は打っておきたい。

そんなわけでブンと赤也を巻き込めばムードさえない夜を過ごせるのではないか、と思ったのだ。

事実、お陰で跡部を含む俺らは雑魚寝した。


それから様々な危険は避けられたが遊園地での事は問題視せざるを得なかった。

こももが体を相当冷やしたん。

そのため、腹の子供への影響をより心配してこももを頭ごなしに叱りつけていた。





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