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act.129『真実が目前に』
(幸村視点)


毎日でなくても時間があるときはこももと子供たちを散歩に連れていった。

長男は利一、次男は利琥、そして三番目の長女は愛利という。

犬は子沢山て言うけどそれは人間になっても有効なんだな、なんて笑っていた。


「さて、始めようか?」

「よっしゃあ!せーいちくん、かかってこい!」

「よし、構え!」

「おう!」


愛利は異常なまでに真田が可愛がっているため、常に彼女を連れている。

一方、父親に似たらしく、次男の世話が大変とかで利琥はほとんどこももが付きっきり。

そのため、長男の利一は手が空いた人間で面倒を見る。

三人をたった一人で世話をするのは大変な労力だと思う。


「ちょ、利琥やめなさい!!」

「おいおい、利琥。んなもんに上って落ちたらどうすんだよい!」

「へっちゃらだぜー?」

「痛い思いしても知らんぜよ?」


一言で言えばわがままなのかな?

いや、ひねくれたのかもしれない。

理由があるにしても利琥にしたら悲しいことだ。


それに比べて愛利は全くのお利口さんだ。


「さぁ、行くよ。」

「ちょろいぜ?…てやぁ!」


どうしてこももは幸せとは無縁、という態度でいるのかわからない。

毎日、利琥のことで泣いているのに。


「げん(い)ちろー?愛利、おててあらってくるー」

「ならば一緒に行く、」

「ううん。げんちろーはおだんごつくってて!」

「わかった。」


ふと見れば泥まみれの手を前に延ばし、愛利が水道へと走っていった。

可愛らしい仕草を見てついつい笑みがこぼれる。

しかし、ハッとした。


「せーいちくん?」

「……跡部、」


公園の入り口に立ってこちらを見ていたのが跡部だと気づいた。

しかし、跡部はなにかするわけでもなく、その場を去ろうとした。

するとそれに気づいた愛利が追って走っていく。


「だれ?しってるひとなの?」

「まずいかもしれない。」

「なにが?」

「利一、待っててもらえるかな?」

「はーい。」

「すぐ戻るよ。」


利一をその場に残し、俺はすぐに愛利を追ったが――間に合わなかった。


「おにいさん!」

「あん?……こももの、」

「ママのおみまいにきてくれてたよね!愛利、おぼえてる!」

「…そうか、」

「やっぱり、にてる。」


愛利も知っていたんだろう。

こももが泣いていた理由、“景ちゃん”を。


「誰に似てんだよ?」

「利琥。」

「利琥?…次男か。なんで次男が俺に似てんだよ?」

「しんじなくていいけど……あそこにいるのが利琥。」


愛利が木に登る利琥を指さしていた。

その先を跡部は捕らえ、目を見開いていた。


「てことは、おにいさんが“けいちゃん”なんだ?」


愛利は女の子だから少しおしゃべりなところがあるが恨めないし怒れない。

こももが動かない代わりに誰か動いたか?


「真実をどう受け止める、跡部。」


これは無邪気な子供の特権だろう。

愛利、おまえはこのままだとママが悲しくて死んじゃうんじゃないか、って前に言っていたね?





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