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act.128『愛しきれない子供』
(跡部視点)


こももへの気持ちに関して悩んでいた4月の中旬頃、一本の電話が俺を変えた。


「景吾ー?宍戸くんから電話よ?」


母親から電話を自室の電話に回してもらい、俺は宍戸の電話に応じた。


「よぉ、跡部。久しぶり!」

「最近会ってねぇが声を聞く限りでは変わらず元気そうだな?」

「おうよ!」

「で、なにか用か?」


宍戸はそう聞いた後に大抵、用事はないと返事をする。

しかし、その日は違った。


「あのよ?こももなんだけどさ?ガキのことでなんか気が滅入ってるみたいでよ?」


そう言われ、思い浮かんだのは真田が連れていた子供。

“…おにいさん…てる”

途切れ途切れに話をした子供がなにを言わんとしていたのかわからなかったがなにか意味があるのではないかと疑問を抱いてはいた。


「こももに似てたな…」

「なに?愛利に会ったのか?」

「…名前までは知らねぇけど病院で真田が連れてるのを見た。」

「そっか。利一と利琥は?」


宍戸、おまえはこの質問で俺がどこまで真実を知っているか試していたんだな。

当時は全く気づきもしなかった。


「そいつらもこももの子か?」

「そう。男、男、女の三つ子。」


三人の母親か。

真田も世話が大変だろうな。

しかし、三つ子だなんて…犬から人間になったと言うものの、排卵する数が人間の数字と異なったのかもしれない。

犬は子数が多い。

そんなことをぼんやり考えていた。


「みんなこももと……」

「あん?」

「…いや。とにかく可愛いぜ?」

「そうか、」


俺にはこももに会う資格はないとこもも自身に言われたようなものだから当然、その子供にも会えない。

その心情を察してか、宍戸はそういえば、とわざとらしく声を大にして言った。


「昼間は近くの公園でガキたちを遊ばせてるってよ。テニスを真田、幸村、仁王、丸井と切原が教えてるとかって聞いた。」

「テニスが出来るってことはそれなりにデカくなったんだろ?」

「2歳半だぜ?小さいテニスラケット振ってるだけらしいけどな。」


三人も子供がいるとなれば親二人だけでは世話しきれないだろう。

周りの手を借りて子供を育ててるのか。


「……会いに行ってみればどうよ?」

「どうせ追い返される。」

「こももはあんま動けねえからベンチに座ってて、ガキの相手してるのは大抵、仁王たちだってよ。」

「………」

「遠くから眺めるだけならいいだろ?利一も利琥もどんな奴か気にならねーの?」


そう促してくる宍戸。

確かにこももの息子がどんな子なのか気にならないと言えば嘘になる。



「(せめてこももが元気がない理由、教えてやりたい。悪いな、こもも。俺はあれからずっとこももだけじゃなくて、跡部の味方でもあるんだよ。)」


宍戸から散歩先を聞き、数日間悩んだ。

こももが元気がないとも聞いたし、2番目息子とうまく行かないとも聞いた。

かなり気になる。


「こももの子供の利琥がさ?いつも泣いてんだよ。いや、泣いてるのはこももも同じか。」

「なんでだよ?」

「“ママは俺が嫌いなんだ”ってな。」

「嫌ってんのか?」

「違うんだけどな。利琥にしたら嫌われてるって思うんだろうな…ま、行けばわかるんじゃね?」


気になりすぎて行かずにはいられない。

事実を確かめるため、眺めるだけでもいい、と内心思った。





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