act.124『最後の言葉』
(跡部視点)
この苛立ちを押さえられそうにはなかった。
だから、後ろからなにか言ってくるこももは無視して手っとり早く近くのホテルに入った。
「(胸、張ってきちゃった…)」
こももの異変に気づかず、フロントで鍵を受け取るやエレベーターに向かった。
エレベーターはすぐに乗れるところにないし、部屋は2階だから階段を使うことにした。
部屋に入ってすぐにこももをベッドに突き飛ばし、上から抑圧すべく、跨った。
「こもも、なにか隠してんだろ?」
「な、なにも…」
「それが嘘だってことくらいわかる。言え、俺になにを隠してんだ!?」
黙り込むこももに俺は怒鳴っていた。
それに驚いてか、肩を震わせたことに気づいていたがもはや自制できなかった。
「なんでおまえはいつもそうなんだ!!」
今のこももに考えられる要因はいくつかあるだろう。
遊園地でのこともあり、俺に嫌気がさしたとも考えられる。
時間もないため、口を割らないこももにイラッとし、俺は手っとり早く体に問い尋ねることにした。
「や、やめてー!!」
悲鳴に近い声をあげるこもも。
真実を確かめるためにも俺はこももの服をすべて脱がせた。
「!」
なにに驚けばいいのかわからなかった。
痩せていること?
胸が張っていること?
母乳が乳首から流れていること?
腹が前より膨らんでいること?
「こもも…おまえ……」
「ッ、」
こももは俺を押し退け、近くにあったバスローブを手に取るとドアに向かって走った。
逃がすわけにはいかなくて俺はすぐに捕まえた。
「どういうことなんだよ!?」
「放して!」
「こもも!!」
ビクッと体を強ばらせたこももは急に大人しくなった。
顔を上げ、俺を見たその瞳からは涙が流れ、悲嘆に暮れていた。
「もう、……会わない。」
「なに言って…」
「これが最後。もう、こももいなくても平気なんでしょ?リョウちゃんのこと吹っ切れたんでしょ?それならいいじゃん。こももは……」
俺の瞳を大きな瞳が捕らえ、真剣そのもので言った。
「人間が嫌いなの。」
「ッ、」
「わかった?今までさんざん人間のわがまま聞いてきたから、疲れた。だからほっといて。」
こももはそう言うと俺を突き飛ばした。
バスローブを羽織るや、ドアを開けてから俺に言った。
「さよなら、」
すぐに引き留めようとした。
だが、先の言葉が頭の中で聞こえた。
“嫌い”
また拒絶されるのが怖くて、俺はこももを手放してしまった。
最後の希望の光を俺はこんな形で崩してしまうなんて思いも寄らなかった。
こももは俺を突き放すためにリョウの名前を出したとわかり、俺は愕然とその場に崩れ込んだ。
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