act.122『人は人を裁けない』
(丸井視点)
仁王はこももの状態を一番よく知ってるからから一番心配してた。
だから真っ先に今回の事情を勘ぐったらしく、跡部に殴り込んだ。
わからなくはねぇ。
でも、跡部ばかりを責められねぇだろうが。
「悪いな。跡部の情報がなかったらこもも発見まで時間かかっただろうに仁王のヤツ、仇で返しやがって。」
「いや…仁王の気持ちもわからなくはない。俺が、悪いんだ。」
なにかはわからねぇけど反省している様子だった。
俺としてはこももも悪いと思う。
でも跡部の話をみんなが帰ってくるまでに聞いてしまってからはなにも言えなかった。
「こもも、俺のために園内に戻ったらしいんだ。」
「どういうこと?」
「俺、この園内に落とし物したんだ。遊園地で遊んだ翌日の今日、夕方の便でアメリカに帰るのを知ってたから焦ったのかもな。」
「跡部のためにこの高い塀飛び越えて探しに入ったのかアイツ、」
跡部のためだった。
早く見つけなければ跡部に渡せずに渡米しちまう。
その気持ちはわかる。
なんで遊園地に跡部が来たかも、居場所がわかったかも聞くと誰が悪いなんて言えない。
聞けば聞くほど、跡部もこもももお互いを大切に思ってんじゃねぇの?って呆れたくなった。
“たぶんメリーゴーランド付近だ!”
跡部はなんでこももがメリーゴーランド付近にいるってわかったのか?
その質問に対し、跡部は顔を歪め、心苦しそうに返答した。
「開園時間になったとき、音楽が流れた。こももと昨日来たとき、アイツがメリーゴーランドを眺めてて、そのときに流れてた曲が携帯を通して聞こえた。」
「そっか、」
なんで叫ばない?
なんで嘆かない?
「ま、こもものことだし、たぶん暖めれば平気だろ。アイツ、仁王や比呂士から冷やさないように再三言われててよ?」
「そうなのか…」
「ズボンが濡れてたらしいんだよな?それで冷えたんだと思う、」
「なんで濡れ……」
はっ、と思い出したように跡部は言葉を詰まらせた。
「まさか、川の中も探したんじゃ…」
「かもな。」
「バカだな…こももはマジで。」
心配してるみたいだし、跡部を連れて俺は比呂士の家に向かった。
話し込んでいたせいで俺と跡部が比呂士の家に着いたのは仁王たちが到着してからかなり後のことだった。
だけど、なぜか赤也と真田が比呂士の家の前にいた。
「今、こももさんには会わない方がいいっスよ?」
「なんでだ「いやぁぁー!」
「こもも、悪い…言えんかったん!でもまだ詳しくはわからんし、」
「なんで教えてくれなかったの!?みんな知ってるのになんでこももだけ!!」
「落ちつきんしゃい!」
「放っといて!もう、こももにかまわないで!出てって!!」
ヒステリックに叫ぶこももの声を聞いて二人が外にいる理由がわかった。
お見舞いどころじゃない。
「(仁王言ったのか、)」
「…丸井、」
「え?なに?」
「ありがとよ。仁王によろしくな、」
「なになに!?まさか帰っちまうの?」
「今は謝るなんて雰囲気でもねぇだろ?」
跡部はそれ以上なにも言わずに帰って行った。
当人たちも辛いんだろうけど、見てる俺らもなにもできなくてかなり辛い。
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