act.118『遊園地』
(こもも視点)
体調も回復したように思え、景ちゃんが日本にいる最後の日。
約束していた遊園地に来た。
楽しめるはずだった。
「なんで見つけてくんだ!」
「ごめ…」
「なんで……なんでだよこもも!」
こうならなければの話。
事を遡ること2時間前。
こももたちはフィナーレとして花火が打ち上げられたのを見た。
「楽しかったね?」
「こももが楽しかったならそれでいい。」
それっぽい雰囲気になるメリーゴーランド、観覧車、お化け屋敷は避け、必要以上に互いが接近することはなかった。
だからふつうに楽しい1日となった。
だけど、気づいてしまったの。
「景ちゃん、いつもしてるあのネックレスは?」
いつもしてるネックレスとはリョウちゃんが宍戸くんの元へ行く際に置いていった指輪を首からぶら下げていたもの。
景ちゃんは肌身放さずいつもしていたそれが今、ないことに気づいた。
「落としたか?」
「じゃあ、探さないと。」
「いや、いい。もう閉園だしな、」
そう言った景ちゃんが寂しそうに見えて、ただ探してあげたいと思った。
閉園だから諦める。
そう言っているように聞こえた。
「景ちゃん、自宅に帰るでしょ?」
「あぁ、」
「じゃあ、ここでいいよ。」
早く景ちゃんを見送って指輪のネックレスを探しに行きたかった。
でも、彼としてはそうはいかず、自宅まで送ると言って聞かない。
「弦ちゃんが迎えに来るから平気ー」
「なんで真田なんだよ?」
「今日、仕事帰りに拾ってくれるって話だったの、」
どこか腑に落ちない表情でこももを見る景ちゃん。
仕方なく彼に電話することにした。
「弦ちゃん今平気?」
「どうした?まさかまたアリバイ工作か?」
「よくおわかりで、」
「俺を使うのも大概にしろ。まったく、」
「今、○○遊園地。」
「迎えに来い、と。そういうことだな?」
「お願いしますー」
電話を切って、景ちゃんを見た。
弦ちゃんが迎えに来ると聞いてもまだ納得いかないみたいで眉間にシワを作っていた。
やがて、一台の車が二人の前に停車した。
「こもも、待たせたな。」
「ありがとう弦ちゃん、」
「…こもも、おまえは――」
「なに?」
「……いや、なんでもねぇ。真田、こもも頼む。」
「頼まれなくとも、」
「だよな。」
ふと寂しそうに笑い、彼はこももたちに背を向けて歩き始めた。
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