act.117『体調不良?』
(こもも視点)
景ちゃんが渡米してから3ヶ月が経った後のこと。
再会をそれなりに楽しみにしていたこももにしたら、大きな悩みだった。
景ちゃんに電話したその日の晩、急に吐き気を催した。
雅治が懸命に背中をさすってくれるけど、功を湊さず。
「ッ、げほっ、ッ!」
「こもも!しっかりしんしゃい!」
「き…ち、わる……」
胃の中が空っぽになっても吐き出そうとする体にその日は苦しんだ。
それはただ、多忙なゆえに体調を崩したんだと思ってた。
本当にそれだけだと思ってた。
「(……まさか、な。)」
だけど、雅治はそれを疑っていたみたいでこももが疲れきって眠った後、比呂士くんに電話をしていた。
翌朝、風邪は万病の元、なんてのが口癖の比呂士くんの病院へ行った。
「昨日、仁王くんから聞きました。風邪かもしれません。早めに手を打つのが効果的です。ぜひ、うちの病院へ来てください。風邪は万病の元ですよ?」
そんな風にメールが来ていたのだ。
結果、比呂士くんのパパからも雅治からも絶対に冷やさないように、と言われた。
珍しく、それにこももは素直に従った。
しかし、その吐き気が完全に止むことはなく、ついに景ちゃんの帰国の日になってしまった。
雅治と空港に迎えに行き、帰りを待っているとき、雅治が慎重に口を開いた。
なにか言おうとしていたけど、景ちゃんの声を聞いて自分の気持ちには勝てなかった。
ごめんね?
「こももさん…?」
「なに?また?」
みんなと食事中、せき込んだこももを見てブンちゃんと赤也が慌てていた。
急いでブンちゃんが持ってきてくれたタオルで口元を押さえた。
雅治はすぐにこももを抱えてトイレに連れていってくれた。
「こもも、具合でも悪いのか?」
心配した景ちゃんに赤也が答えていた。
「いや〜最近、こももさんってば慌てて飯を食うもんだからむせちまうんスよ〜」
「そうか、」
赤也はよくうちに来るし、最近のこももの体調も知ってくれていた。
ブンちゃんもだけど。
比呂士くんには無茶をしないように言われた。
「こもも、平気か?」
「ん、」
今回はなんとか吐かずに済んだけど、苦しかったせいで涙が滲んでいた。
それを雅治はトイレットペーパーで拭った。
「寝てたら?」
「無茶すると体に悪いぜよ?」
「心配してくれるのは嬉しいけど折角景ちゃんが帰国しているんだから…」
そう考えると無理しなくてはいけないだろう。
水分不足にだけはならないように、とブンちゃんが言い、雅治は軽く抱きしめて背中をさすってくれていた。
その時、景ちゃんが様子を見に来た。
赤也から事情を聞いたらしく、彼はは心配だから寝てろと言う。
「明日、仕事なんだろ?」
「う、うん…」
「遊園地なんか俺は最終日でもいいしな。それまで休んでろよ、」
雅治を見ればそうしろ、と言わんばかりに頷いていた。
確かによく考えれば景ちゃんと一緒にいることで気疲れもないからいいかもしれない、なんて思ってしまった。
ただ、これがただの体調不良ではないとこもも本人が知らないんだから笑えるな。
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