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act.115『体の辛苦』
(こもも視点)


再会をそれなりに楽しみにしていたこももにしたら、大きな悩みだった。

帰国宣言を景ちゃんから受けたその日の晩、急に吐き気を催した。

雅治が懸命に背中をさすってくれるけど、功を湊さず。


「ッ、げほっ、ッ!」

「こもも!しっかりしんしゃい!」

「き…ち、わる……」


胃の中が空っぽになっても吐き出そうとする体にその日は苦しんだ。

それはただ、多忙なゆえに体調を崩したんだと思ってた。

本当にそれだけだと思ってた。


「(……まさか、な。)」


だけど、雅治はそれを疑っていたみたいでこももが疲れきって眠った後、比呂士くんに電話をしていた。

翌朝、風邪は万病の元、なんてのが口癖の比呂士くんの病院へ行った。


「昨日、仁王くんから聞きました。風邪かもしれません。早めに手を打つのが効果的です。ぜひ、うちの病院へ来てください。風邪は万病の元ですよ?」


そんな風にメールが来ていたのだ。

診察してもらった結果、比呂士くんのパパからも雅治からも絶対に冷やさないように、と言われた。

珍しく、それにこももは素直に従った。


「今こもも、いるか?」

「悪いのう?疲れた、言うて寝たんよ。伝言なら言付(ことづ)かるぜよ?」

「あぁ、1週間後、5日だけ日本にいられることになった。」

「そうなんか。じゃあ、楽しみにしておくぜよ。」


しかし、その吐き気が完全に止むことはなく、ついに景ちゃんの帰国の日になってしまった。

雅治と空港に迎えに行き、彼の帰りを待っているとき、雅治が慎重に口を開いた。

なにか言おうとしていたけど、景ちゃんの声を聞いて自分の気持ちには勝てなかった。

ごめんね?


この数日で溝が深まるかもしれないことに気づいて、もっと注意していたら…

もっと早くに真実を知っていたら…


「なんてことしてくれたん!?こももはなぁ!!」


雅治が人の気持ちを捻り潰す殺人鬼へと化してしまうことはなかったのだ。

いいや、雅治はこもものために景ちゃんを突き放さなくてはいけないと感じたのだろう。

ただ、それだけ。


「なんでだよ…!なんでだよこもも!!」


恋愛とはなんて面倒くさいのだろう。

セックスとはなんて奥が深いのだろう。

人間としての人生たった6年ですべてを経験した気がした。


「ねぇ、雅治…こももの体どうなってるの?」

「それは…ッ、」

「仁王くん、いつかは言わなければいけないことでしょう。」

「じゃけ!こももん体に負担かかること考えると…!」

「落ち着いてください。」


雅治がイライラしてる。

比呂士くんは冷静を保っているように装っているけどどこかおかしい。


「こもも、おまえはな…?」


あぁ、どうすればいいのだろう。

過去を振り返ると考え直さなければいけないことが多いから、前に進むしか道はないのかもしれないけど。





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