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act.106『冬―凍らせた気持ち』※
(こもも視点)


ある日の夜。

ベッドの横の床にはいつものように脱ぎ捨てられた服が落ちていた。


「エッチ!」

「男はエロい生き物だ。知ってんだろうが、」

「だからって胸ばっかりいじらないで!」


景ちゃんはこももの上に被さり、胸を柔やわと揉み、時たま乳首を摘んで遊んでいた。

それを中断させるかのように携帯が鳴った。


「電話、」

「出なくて良い。」

「急ぎだったらどうするの?」


携帯に手を伸ばすとそれを邪魔する彼。

抵抗しながらそれを手に取ると大人しくなった。


「すぐ済ませよ?」

「うん、」


電話に出たから、こももが電話に出たから終わったのかな?

こもものせいかな?


「もしもし?」

「よ、こもも!」

「宍戸くん…久しぶり?」

「今平気?」

「うん。どうかした?」


景ちゃんはもう早暇を持て余し、こももにちょっかいを掛けてくる。

片手が塞がってるのを良いことに胸や秘部を触ってくる。


「…ふ、あ…ん!」


我慢できず、声を出してしまった。

すると宍戸くんは呆れながら電話の向こうで言う。


「こもも、まさか相手跡部?」

「な、んでわかるの?」

「なんとなく。未だにリョウの身代わりしてんのか?」

「え?」

「そりゃあ、跡部には悪いとは思ってるけどよ?こももが辛い思いすることねーだろ?」


なにも言えなかった。

こももはリョウちゃんの身代わりだと宍戸くんに言われて、頭が真っ白になった。

少し宍戸くんと話をしてから電話を切った後、呆然としていた。


「こもも?」

「……ごめん帰る、」

「は?」

「用事出来た、」


うまく誤魔化せなくて下手な嘘をついた。

彼にはそれとバレてしまうだろうけど。


「宍戸になにか言われたのか?」


自信がなくなったと言えばそれでおしまいだけど、実際は怖くなった。


「帰る、」

「させるかよ。」

「……じゃあ、聞いて良い?」

「あん?」


こももは一つの質問にすべてを託した。


「こももを抱いて、雅治に悪いと思った?」


もし、こももが身代わりなら申し訳ないと思うだろう。

傷つけて、いらなくなったら雅治に返すのだろうから。


「…というより仁王に怒られんな。」

「なんで?」


事後、こももが浮かべた額の汗を拭ってから抱き寄せた。

抱いた後に言っても仕方ないが、俺は少し申し訳なく思った。


「またおまえは人のもの盗るのか?って言われそうだろ。」


思っていた答えとは違った。

肝心なのは彼自身の気持ちであって、周りの意見ではない。

わかってる。

でも怖いの――


「そっか……答えてくれてありがとう。」

「…帰るつもりか?」


景ちゃんは身を起こしたこももの腕を掴むとベッドに押し倒した。


「帰さない。」

「や!やぁー!!」

「頼むから…頼むからそばにいてくれ…」


こももを抱きしめた彼の腕が震えていた。

でも、自分自身を許せなくて拒否し続けた。


「やっ、やだ!」


こもものその日は無理矢理抱かれることで幕を閉じた。





あきゅろす。
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