act.103『ごめんとつい…』
(跡部視点)
あの後、すぐに感謝するべきなのは俺の方だと気づきこももの言葉を遮って言った。
「こもも、いつもありがとな?」
「いきなりなに?」
ワインをテーブルに置き、付き添いできた使用人に目配せした。
するとある物を持ってきた。
綺麗に包装されていた小さな箱をこももに渡した。
「…開けて良いの?」
無言で頷き、こももの表情をうかがっていた。
包みを開けて中を見るなり動きが止まった。
「……気に入らないか?」
「……」
「こもも?」
声をかけてやっとハッとしたように俺を見た。
そして嬉しそうに微笑み、ハンドバックから携帯を取りだした。
携帯につけるや席を立ち上がり、俺に抱きついてきて携帯を見せてくれた。
「ありがとう、けーちゃん!」
「わかったから座れよ、」
嬉しそうにしているこももはしばらく俺に抱きついていた。
「よーし!今日は飲むぞ!」
「程々にしろよ?」
食事を済ませると酒の飲み過ぎのせいで自宅に帰るのがダルく思えた。
だからホテルに泊まることにした。
「高ぁーい!」
こももは部屋に案内されるなり窓辺に駆け寄った。
見下ろせば夜景が見えるだろうし気持ちはわかる。
その背中を見ていると去年、星を見ていたときにキスをしたことを思い出した。
「ねぇ、景ちゃん。見てよ。」
あのときはまだわからなかった。
しかし、今は違う。
「そんなに綺麗なのか?」
「うん、すごくね。」
こももに近づき、左手を腰に手を添えて体を引き寄せ、右手で顎をすくった。
「確かに、綺麗だな。」
「……夜景の話なんだけど。」
「夜景よりこももの方が綺麗だ。」
「バカ、」
遠慮しながら唇を寄せた。
一度だけキスするとこももが首に腕を回してきた。
許された気がして角度を変えて何度となく唇を重ねた。
「……景ちゃん、」
「悪いな…」
「それはなにに謝ってるの?」
「わからねぇ、」
首筋にキスを落とし、抱きしめた。
こももの着ているカクテルドレスのチャックをさっと下ろすと背筋がよくなった。
「まだなにもしてないぜ?」
「…まるでこれからなにかするみたいな言い方、」
「されることわかってるくせになにいいやがる。」
肩紐をずらすと床にドレスが音を立てて落ちた。
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