act.100『気持ちも常夏』
(跡部視点)
「じゃあ、跡部さんどうぞ。」
「ふん、俺様に不可能はない。で?どうやるんだ?」
鳳が説明し、ルールを把握すると、目隠しをされ、こももに回してもらった。
すると岳人が右だのまっすぐだの、行き先を指示した。
「ちょ、向日さん!」
「んだよー!先輩に楯突くのかぁ?」
「い、いえ…」
「(あのまま行くと…)」
「あ、跡部ーその辺!」
岳人の指示通り足を止め、棒を振りあげた。
「スイカよ、俺様のに美技に酔え!!」
「「(久々の台詞!)」」
言った台詞に満足して俺は棒を振りおろした。が、しぶきがかかった。
一瞬、なにが起きたかわからなくて焦った。
スイカを叩いたせいで爆発したのか、とまで考えた。
「ぶあははは!!」
「あらら、びしょ濡れじゃない…」
爆笑してる岳人の声を聞いて謀られたと理解した。
「てめぇ岳人ー!!」
「バーカバーカ!」
逃げていく岳人を追うことがバカバカしく思えて、途中で足を止めた。
するとこももがタオルを持ってきてくれた。
「情けない顔〜」
笑いながら言うこももになにかしてやりたいと思った。
フッと不適に笑ったあとにこももを抱えあげた。
「ちょ!!」
「俺様の気持ちを思い知れ、」
そして、海に投げ込んでやった。
しばらくジタバタと水中でもがいていた。
「なにするのよー!!」
「情けねぇ面してんのはこももだって同じじゃねえかよ。」
濡れたTシャツを無理矢理脱ぎ、俺に投げつけた。
言うまでもないが彼女はビキニを着ている。
それを見て、水着はこちらで用意すべきだったと少し後悔した。
あまりの可愛さに周りの目を気にした。
「髪の毛ぐちゃぐちゃー」
濡れた長い髪の毛を絞る姿を見てドキッとした。
忍足が最近やたらこももが綺麗になった、と言う理由がよくわかる瞬間だった。
海をチョイスしたのは間違いだったか。
「景ちゃんのバカー」
「ククッ、悪いな。ほらよ?」
手を差し出して起こしてやった。
するとそのまま抱きつかれてバランスを崩して水の中に倒れた。
全身ずぶ濡れだ。
「ゲホッ、…にしやがる。」
「景ーちゃん?」
「…あ?」
「大好き!」
太陽のように輝かしい笑顔で笑うから、俺の心は常夏のように熱くなった。
「もう、平気?」
「は?」
「……大丈夫そうだね!」
質問の意味を理解出来なくてこももに何度も尋ねたが答える気はなさそうだった。
「(おまえが俺に優しくしてくれるのは同情じゃねぇよな?)」
こももを信じてみようと思った。
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