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act.96『今を生きる』
(跡部視点)


「俺、……やっぱり無理だ。リョウ(ペット)がいない生活なんて…もう、独りは嫌だ。…寂しいんだ、」


そうテラスにいるリョウに言う宍戸にこももからのヤジが飛んだ。


「素直に言いなさい、宍戸くん?それじゃあ、ペットの身代わりでもよかったんじゃないの?」


まだ宍戸を思っているのか皮肉っぽく言うこもも。

俺は逆にこももを抱きしめた。


「俺…俺は今でもリョウが好きだ!」


そう言った宍戸の言葉にリョウはすぐに走り出した。

テラスから俺の自室を通り、長い廊下を走り抜け、ふつうより多い段数の階段を下り、玄関のドアを開けた。


『宍戸!!』


自分に駆け寄ってきたリョウを宍戸は嬉しそうに抱きとめただろう。


「あのバカ、でかい声出しやがって…近所迷惑だ。」

「俺の気持ち無駄にしやがったら吊し上げてやろうと思ってた、ぐらい言ってきたら?」

「マジでな、」


笑いながら言うこももに俺は力なく笑った。

わぁぁ、と外で歓声が上がり、俺は同時にリョウを祝福した。


「(よかったな、リョウ…)」


そんな中、ジローが冗談をほのめかしているなんて知る余地もなかった。


「最終的に跡部はこももに流れそうだから大丈夫だC!」

「さぁ?…それはどうじゃろうな?」


俺とこももを横目で見て、仁王が不気味な笑みを浮かべていた。

俺は別に落ち込んでるわけではなく寂しさを感じているだけだが、いつまでもこももに落ち込んでいると思われたくないと思った。


「こもも、おまえ俺様のところに嫁にくるか?」

「…え?」


冗談を交えて言ったつもりだったが、こももの表情は困惑一色に染まった。


「やめときんしゃい、こもも。ろくな目に遭わんよ。」

「なんて失礼なことを言いやがる!ああん!?」


辛い思いもしたし、辛い思いをさせた。

だが、少なからず俺は前に向けて着実に進んでいる。


「こもも?」

「なに、景ちゃん?」

「おまえの気持ち、わかったぜ?本当に好きなヤツが幸せそうだと自分まで幸せになれる、ってやつな。」

「…よかった!」


ずっと支えてくれたこももにありがとう、辛い思いをさせたこももにごめんと言いたい。

そして、これからは俺が支えてやる。

胸を張ってそう言いたかったのに、こももは言わせてくれやしなかった。





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