act.97『懺悔(ざんげ)』
(こもも視点)
リョウちゃんと宍戸くんが幸せになれた瞬間、気持ちが交錯した。
“幸せになれてよかったね”
“本当は辛かったんだ”
“幸せになってくれなきゃ困る”
「(……おめでとう、)」
心から祝福したい。
けど、景ちゃんの気持ちを考えれば辛いけど、表情を見てさらに胸が痛んだ。
「やっと、か……」
「景ちゃん、」
「俺は罪を償えたか?」
「…そうだね、」
複雑そうな表情を浮かべている彼にこももはこう言うだろう。
“これからも変わらず、こももがそばにいてあげる”
自分の気持ちを欺(あざむ)くために都合の良いように嘘をついた。
「新しい恋ができるといいね?」
「……あぁ、」
人間はわがままで自己中心的で利己的で自分勝手。
そんな人間にはなりたくはないけど、こももも今は人間だ。
だから、わがままで自己中心的で利己的で自分勝手なんだろう。
“同じような意味の単語を並べて面白い?”
自分に尋ねて自分を嘲笑した。
「笑っちゃうよね。」
「なんの話だ?」
「なんでもないよ?」
なぜ、こうも自分に対して可愛げがないのかわからない。
理由があるとすれば、
「(誰も信用できない。)」
一度目の恋愛で失敗したことだろう。
人間の愛なんてモロいものでいつか冷めてしまうものだと思ってる。
「こもも?」
「なに?」
「なに考えてんだ?」
「景ちゃんのこと〜」
「ッ、…バカか?」
「嬉しいくせに〜!」
「んなわけねぇだろ!?」
「ムキになる辺り怪しいー!」
「うっせ!無駄口叩くな、」
それでも知ってたよ?
同じ時を過ごしていく内にあなたが好きになってくれてること、大切にしてくれてることを。
「それにしても、宍戸くん。幸せそうだねー?」
「あぁ、」
「こももー?」
「…宍戸くんが呼んでる。」
外から呼ばれて窓から顔を出せば、満面の笑みを浮かべて宍戸くんが言う。
「これ、ありがとな!!」
見せてくれたのはいつか彼にあげたチョーカー。
「今度はこももの番だぜ?」
なにを言うのかと呆れていたところ、下から何かを投げられた。
うまいことキャッチしてそれを見たときは無性に嬉しくなった。
「……あり、がとう?」
「俺もこももの味方だからな!」
“I rush anytime.”
“ Because I'm your friend.”
だけどね?
信用できないの。
“いつでも駆けつける”
“俺はおまえの味方だから”
愛され、愛すことなんて簡単なのに、こももには出来ないの。
「なにもらったんだ?」
すぐにネックレスをつけたこももを見て、景ちゃんに聞かれた。
「友情の証、」
怖いの。
愛することも、愛されることも。
信用できないの。
人間なんて、ろくな生き物じゃない。
そう思ってるこももが一番、下等動物だとわかっている。
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