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act.60…再会


小さな大会に出場することから俺のテニスプロ人生の始まりだった。

ことあるごとに大会に出場したのは注目されるためだった。

かつてすべての大会で勝利を掲げたプロテニスプレーヤーの越前南次郎ではないが、彼のように俺は負けなしだった。


「…もっと、燃える相手はいねぇのか?」


気がつけば、そんな風に呟くのが常となっていた。

テニスへの熱が冷め始めた頃、おもしろい話が舞い込んできた。


「跡部くん、待たせてごめんね!」

「俺はどうせ暇人だ。忙しい奴に足並み合わせんのは当たり前だ。」


それは佳梨からの情報だった。

蓬莱の所属している事務所が日本との交流試合を計画しているらしい。

米倉蓬莱とダブルスを組ませ、日本の選手と試合をするというものでパートナーは男女問わないとか。


「チャンスでしょ?」

「確かにな。」

「蓬莱先輩の場合、プロだからハンデとして試合直前にパートナーを紹介されるんだ。」

「申し込みは?」

「俺が跡部くんを推してきた。まだ蓬莱先輩は知らないからいいんじゃない?」


佳梨の計らいで俺は2週間後、アメリカで開催される試合に出場出来ることとなった。

色々、楽しみだった。

それはいいが蓬莱に関しての話が持ち上がる度、俺はあの話を佳梨にしてしまうのだった。


「なぁ、佳梨。」

「なに?」

「蓬莱に関して疑問が未だに解けない。調べても情報がなくてな。」

「あぁ、ご両親の話のやつ?気にしなくていいんじゃない?」


俺の両親が蓬莱をよく思わなかった理由が未だにわからない。

佳梨からは毎回、知らないという返事を受けていた。


「とにかく、日本から来るお客様になめられないように頑張って。」

「あぁ、」

「試合相手も当日、会場に行かないとわからないらしいしね。」


邪念を払いのけ、俺は来たる試合に向け、トレーニングを積んだ。


それから2週間後の大会当日。

会場はかなり盛り上がっていた。

アップし終え、控え室に戻ると渡米してきた大会出場者が先にコートにいると聞き、待ちきれずに会場へと向かった。

コートへ出る扉を少しだけ開けて会場の雰囲気と対戦相手を見た。

俺はその大会出場者を見て目を見開いた。


「真田と丸井…!?」


しばらくしてから会場案内者にコートへ行くように促され、俺は試合相手の前に出向いた。


「あ、跡部!?試合相手はてっきりアメリカの綺麗な女子プロだと思ってたぜぃ。」

「たるんどるぞ、丸井。」

「俺はてっきりミクスドだと思っていたがな。ある意味、ミクスドか。」

「……」

「俺は男だ!!」


どうも容姿からして岳人と被る。

体格もそんなに大きくない丸井はどちらかというと妻役。

体格がいい真田と並ぶから余計かもしれないが。


「例え、丸井が女だとしても負けやしない。」

「上等だ、」

「つか、例えでもんなこと言うなっつの!」


相手は敵だが久々の再会(試合)を喜んでしまっていた。

間もなく、司会者が俺のパートナーを迎え入れた。


「(お、蓬莱。)」

「彼女が米倉蓬莱か。テレビで見るより華奢だな。」

「女だからって油断してると痛い目見るぜ?」

「油断などするものか。」


口の端を持ち上げて笑ってから振り向いてパートナーを迎えた。


「よろしく、」

『!』


彼女は試合相手の丸井を見て、そしてパートナーの俺を見て、驚いたようで立ち止まった。


『(なにに驚けばいいの…?)』


その試合の中、蓬莱のいくつかの異変に気づいたのは佳梨だった。

さすがは蓬莱の後輩――そして、スポーツトレーナーだ。





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