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act.46…連鎖


秋に開催される学校の催し事と言えば学園祭だろうか。

その日が近づくにつれて授業時間を潰してまで、学園祭について話しあうようになった。

それだけ盛り上がってるということだ。


「なぁ、跡部。蝶は来るん?」

「なんでだよ?」

「普通は学祭に彼女を呼ぶもんじゃよ?見せびらかす、というか自慢するのにな?」


ほかの人間はそうかもしれないが俺の場合は違う。

蓬莱をあまり人目のつくところに置きたくはないのが本音だ。


「まぁ、人目につくのは避けたいのかもしれんけど、手元にいるほうが安心じゃけ。違うか?」


その本音を知っているはずの人間がなぜ、蓬莱を学園祭に連れてこいと言うのかいまいち理解できなかった。


「声はかけてみる、」

「そうしんしゃい。」


俺は仁王の提案を飲んで帰宅後、蓬莱に声をかけてみた。

あまり乗り気ではなかったが…。


『学園祭?私も行けるものなの?』

「外部参加OKの企画もあるんだから良いと思うぜ?」

『ホント?じゃあ……って、それはいつ?』

「来週の土日、」

『来週?……ごめん、日曜日は約束があって、でも土曜日なら行ける。』


仁王の言いたいことがなんとなくわかった。

蓬莱に予定なんかない、とも思っていたから仁王の助言に従って正解だった。


「なら土曜日、案内してやるよ。」

『ありがとう。楽しみにしてる。』


無邪気に笑って見せた蓬莱に気を取られていて忘れていた。

日曜日にある彼女の予定がなにか、また誰との約束か。

忙しかったせいもあり、そのことが頭に上ることもなく、学園祭当日を迎えてしまった。


「え?蝶が来んの?」

「あぁ、着たら連絡がくるんだがな?」


一瞬、不安げな顔をして岳人が仁王を見ていた。

それがなにを意味するかを考えてはいられなかった。


「それより岳人。相棒(忍足)が来んじゃねぇのか?」

「来なくて良いし。」

「噂をすれば〜って言うじゃろ?あそこ見んしゃい。」


仁王が顎で示した先を見ればそこには忍足がいた。

あからさまに嫌そうな顔をした岳人は仁王の背中へ逃げるように飛び乗った。


「あ…岳人!!」

「げっ、来た〜」

「ちょ!また仁王か!なんで仁王の背中に!降りぃや!」

「やだぁー!!」


岳人にすればこったり系の忍足より、サッパリ系の仁王の方が好きらしい。

アイツはしつこいんだと思う。

忍足は岳人に軽くあしらわれているのがなによりの証拠。


「せったく来たったのに。」

「呼んでないし、待ってない。」

「はぁ。いつからこんなにつれなくなったん?前はもう少し可愛げがあったのに、」


俺にはそう冷たくないから岳人が忍足に対してどうであろうと全くもって関係ない話だ。

だから首は突っ込まない。


「仁王ー!」

「仁王先輩ー!」

「ん?お、丸井ブン太に切原赤也!」

「こんにちわっス、向日さん。」


仁王が呼んだのか、立海大の丸井と切原がセットでやって来た。

元立海大の仁王と二人がかなり人気があるらしく、プリガムレッド、なんてあだ名でみんなから愛されているくらい。

そのことを本人たちが知ってるのかは疑問だ。


「また向日さん、仁王先輩の背中乗ってるんすか!忍足さんがカビ生えますよ?」

「侑士はキノコでも生やしとけ!」

「ひっでーヤツ。」


相方の切原が岳人と話をしているため、丸井が俺に近寄ってきた。

その瞬間、甘い匂いがしたのは気のせいではない。


「あん時はどーも!」

「急に呼び出して悪かったな?」

「いんや?失敗したとはいえ、パイ食べさしてもらったしな。」

「失敗した、は余計だ。」

「はは。ところで成功したのか?」


パイ生地が山ほど出来たときには丸井の消費力(?)に感謝した。

丸井がいなければ岳人が食べきれなかった多くの残り物がゴミ箱行きだったからだ。


「あん時のおまえ、必死で最高に笑えたぜぃ。」

「うるせぇ、」

「で、パイを食べさせたという噂の彼女にバッタリ会ってよ?」


俺が丸井の話を理解出来ずとも丸井は中断することなく話し続けた。

なぜ“噂の彼女”が誰かを知っているのかわからなかったがすぐに理解することになる。


「ここに来るって言うから連れてきた。」

「話がよくわからねぇ。」

「だーかーら!蓬莱だよ!米倉蓬莱を連れてきたんだっつの。」

「待て。なんでパイを食べさせた相手が米倉蓬莱だとわかる?」

「仁王から聞いた、」


何か問題でも?的な顔をしている丸井を見ると仁王を怒る気になれなかった。

驚いたのは丸井が蓬莱と俺に繋がりがあることに驚愕しなかったことだ。

「だって、跡部だもんな。」


わけのわからねぇ回答を提出すんな。

どうせ悪い意味の答えなんだろ?


「ま、蓬莱に会えたのは跡部と仲がよかった仁王のおかげ、つーことで。」


意外と冷静だな、と思った。

丸井くらいのキャラなら蓬莱に会ったらはしゃぎそうなものだ。


「あ、そうそう。蓬莱は校門とこにいるぜぃ?」

「そういうことは早く言えバカ!」


丸井に言われ、すぐに蓬莱の元へ向かった。

校門のところに来ると確かに蓬莱がいた。


「蓬莱、」

『あ、景吾ー』


俺に気づくや安心したような表情を浮かべる彼女。

それが無意識だというのだから罪深い。


「蓬莱、丸井に会ったって?」

『丸井?あ、ブン太ね?』


なぜ苗字を聞いてピンとこないのか疑問に思った。

もしかしたら知り合いなのか、などと考えていたがそれは妥当だった。

丸井との関係を聞けば、彼女はなんの躊躇いもなく答えた。

つまり、二人の関係が潔白だからそう言えたんだろう。


『ブン太のお父さんがスポーツメーカー社の社員で、私がプロ入りする前にいろいろお世話になったの。』


テニスウェアやユニフォームは未だに丸井の父親に助けてもらっているという蓬莱。

人の繋がりってのは恐ろしいと思った。





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