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act.9…待ちわびた再会


それからというものの、蓬莱が出ているテニスの大会の番組や雑誌の情報を仁王と岳人が調べては教えてくれた。

その度に思う。

いつになったら蓬莱に会えるんだろう、と。

すると切なくなった。

しかし、また会おうと約束したから待つのは苦にならなかった。


「跡部っ!部活行こうぜ!」

「あぁ。」


あれから半年、毎日ただ待っていた。

蓬莱と同じ共通点であるテニスにひたすら打ち込んで――。


「あ、ちょ、ちょちょ!」

「なに突っ立ってんでんだよ?」

「…………あ、ああ跡部。」

「なんだよ?」

「あれ……」


部室に行く途中、岳人が足を止めて口を魚みたいにパクパクさせてた。

その面に笑うことなど忘れていた。

俺は岳人がそうだったように先にいた人物に驚いて唖然としていた。


『けーいごー!』

「…蓬莱…」

「(本物だー…そういや仁王どこだよ!報告しなくちゃ。)」


起きていることが理解できない。

目の前には待ち続けた蓬莱がいて、俺に手を振っていた。

ついに幻覚が見えた、と一瞬怯(ひる)んでしまった。


「な、んで…」

『半年ぶりだね!』

「なにが半年ぶりだね、だよ!俺はずっと待ってたんだよ!!」

『ごめんね。』


そう、この再会の時を待っていた。

半年、蓬莱を思い続けてやっと会えたこの思いを文章では伝えきれない。

嬉しくもあり、少し残念な気もした。


「プロ…だったんだな?」

『プロになったの。』

「なった?」

『2回目の試合に勝って、次の試合まで余裕があったから休暇で日本に帰ってきてたんだ。景吾に会ったあの日は次の試合に備えるため、アメリカに帰る日だったの。』

「そうだろうな。アメリカで開催される試合に出場するんならすべてつじつまが合う。」

『ごめんなさい。』

「なんで謝るんだよ。おまえは悪くないだろ?」


それは俺はただの高校生で相手は世界を魅了させたプロ。

つまり、別世界の人間だと実感してしまったからだ。



それにしても初めに出会ってから半年も経ってるなんて嘘みたいだった。


『忘れられてなくてよかったよ、』

「忘れるかよ。」


意味も理由もなく、お互いの顔を見合って笑ったこのときは幸せだと感じられた。

他の女では味わえない喜びがあった。


「跡部が笑ってる…」

「あんな顔は今まで見たことないかもしれんのう。」

「なんか、なんての?……ちょっと寂しいよな。俺たちといるより楽しそうだなんてよ?」

「……蓬莱といるときは俺らといるときとはまた違うんじゃろ?俺らには俺らの役目があるん。そう落ち込みなさんな。」

「うん……アイツが幸せそうだからそれでいいか!」

「そうそう。」


陰で俺たちを見守ってくれている友が寂しげな目を向けていることなど想像もしなかった。

自分は目の前の蓬莱に夢中だったからだ。

薄情者とでも呼べ。


「で、なんで日本にいるんだよ?」

『今回は長期休暇でね。』

「そうか。」

『驚かせようと思って。』

「驚くもなにも、幻覚かと思ったぜ?」

『あはは、そっか〜。』

「あ、そうだ。まだ10月だから○○公園のテニスコート使えるぜ?一試合どうだ?」


蓬莱に肩に掛けていたテニス用具を入れていたバックを見せる。

それを見た蓬莱がニヤッと罠にかかった獲物を見たように笑う。


『いいけど……景吾に勝ちは渡さないよ?私に勝つなんてまだまだ早いんだから。』

「やってみなきゃわかんねぇだろ?」

『無理だって〜。』


バカにしたような態度を見てムキになり、俺は蓬莱の前に立って見下ろしながら鼻で笑ってやった。


「じゃあ、賭けるか?」

『いいよ?じゃあ、私が勝ったらなんでも言うこときいてくれる?』

「いいぜ?もし、俺が勝ったら俺の言うこときけよ?」

『よし、乗った!』


子供みたいな約束を交わし、俺たち二人は校外のコートに向けて歩きだした。

校内のコートなんかにいたら大騒ぎになりかねないし、そうさせたくはなかった。


「待てよ跡部、」


陰から見ていたのだろう岳人が声をかけてきた。

立ち止まって振り返るとそこにはジャージを怠(だる)そうに持つ仁王とその背中に乗る岳人がいた。


「制服でやるつもりかよ?」

「部室で着替えてきんしゃいよ。」

「あ、あぁ。」


実はこのとき、仁王や岳人が蓬莱を好きになるんじゃないかって不安だった。

コイツら二人にそんなことになる要素なんかないのにな。





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