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act.8…初恋よ実れ


喜んでもらえたはいいがその後、仁王がふと疑問に思ったことを口にした。


「連絡先、聞いたん?」

「……聞く前に帰っちまったから。」

「えー!?それじゃあ、恋も実らないじゃんかよ!」


なんで聞かなかったんだ!なんて言われて、そんな余裕がなかったことに気づく。


「まぁまぁ、落ちつきんしゃい向日。きっと蓬莱も日本に帰国するときがあるじゃろ。」

「今は春ですからねー…もうすぐ日本で開催される大会もあると思いますよ?」


などと励まされていたことに耳も傾けず、俺はインタビューに応じる蓬莱に釘付けだった。


「あんらまぁ…あんな顔しちゃってぇ。カメラに収めないと!景吾の成長はすべて残してるんですよ。」

「あ、じゃあじゃあ、俺も恋する乙女的な跡部撮ってみんなに回してやる〜!」


自分の間抜け面がカメラに収められそうになっている――かなり危機――ことにも気づきもしなかった。


「これが跡部にとって初恋なら実らんかもしれんけどな…」

「初恋が実る、なんてあんまし聞かねぇもんなぁ。」

「でも実ってほしいですね。やっと人を愛することを知ったんです……今まで女を性欲処理の道具にしか見てなかったんですから。」

「なん?それは親心っちゅーもんか?」

「まぁ、そんなとこですね。」

「(そんじゃなか困る。)」


そのとき、俺は気づいた。

もしかしたら蓬莱に会ったあの日、時間に遅れると言ったのはアメリカ行きの飛行機だったんじゃないかって。

それなら、また会いたいと言ってくれた蓬莱の姿を見ることなく4日も経ったことも納得が行く。


次いつ会えるかもわからない相手。


蓬莱に会えたときの気持ちを思うと不思議なことにこの短気な俺が待っていられたのだ。





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