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act.7…絆


――金曜日。

アメリカで開催されるテニス選手権を俺の家の大画面テレビで見る目的で二人がやってきた。

約束をした記憶はないが、恐らく適当に返事をしたあれだろう。

二人を部屋に通してしばらくすると中村が飲み物を運んできた。


「あら、岳人ん(がくとん)に雅治じゃないですか。二人でまたテレビ見に来たんですか?」

「うん。だけど今日、俺泊まることにしたぁー!」

「はぁ!?」

「向日が泊まるんなら俺も泊まるか。」

「なんで岳人が泊まると仁王も泊まんだよ!」

「忍足が聞いたら悔しがるから〜とか言うてみる。」


確かに仁王をライバル視している忍足が聞けば悔しがるだろう。

その一方でなんで忍足が悔しがるのか理解できない岳人がいた。罪な奴。


「と、いうより保護者代わりってところじゃ。」


改めた仁王の理由を聞いて納得する俺を見て不満げな顔をした岳人はぶつぶつ言いながら慣れた手つきでテレビをつけてリモコンを手に取った。

画面がすごい早さで変わり、目がチカチカする。


「お、これだ!」


やっとチャンネルが合ったのか、岳人は満足するとリモコンを投げ出した。


「そういえば今日は注目されている選手が出るんですよね?」

「米倉蓬莱じゃ。」

「若くして大会連続3連覇ですからね〜。みなさん注目なさってますよ。」


中村と仁王の会話を聞き、ふと頭をよぎるあの暖かい笑顔。

同名なだけかもしれないと自分に言い聞かせ、ジュースを手に取り、コップに刺さっていたストローを口にくわえた。

と、次の瞬間目にした光景で俺は確信した。


「嘘、だろ?」

「米倉蓬莱!めっちゃ美人さんだよな〜!」

「本当ですよねー?」


画面の中で真剣な眼差しを相手に向ける彼女を見て、持っていた飲み物を落としてしまった。

辺りに飛び散ったジュースを慌てて中村が片づけ、岳人も一緒になって床を拭いていたが仁王は違った。


「嘘だろ、って何なん?」

「あ、いや、その……」


言葉を詰まらせている俺に気が付き、心配そうにしている岳人が視界に入る。

中村は温かな表情で、仁王は真剣な面もちで俺を見つめていた。

俺はなにもかも見透かしたような仁王の視線が未だに苦手だったりする。


「まぁ…言いたくないなら言わんで良い。けど、俺らはおまえさんの見方じゃけ。それは忘れなさんな。」

「俺もだぜ?」

「だって、俺ら親友じゃけ。」


いつから詐欺師と親友になったんだ、なんて悪態をつく余裕はなかった。

穏やかな口調で言った仁王の言葉が胸に突き刺さって抜けやしなかったからだ。


「……米倉蓬莱に会ったんだ。」


蓬莱と話して嬉しかったことを中心に感じたことすべてを話し終えると一番始めに口を開いたのは岳人だった。


「それってよー?好きなんじゃね?」

「中村もそう思います。」

「跡部景吾が人を好きになる。中村さん、そんなこと今まで1回でもあった?」

「私が見てきた中ではありませんでしたね。」

「じゃあ、それって良いこと?てか、良いことだよな!?」


結論付くや岳人が喜んで俺に抱きついてきた。

そして力一杯、頭を撫で回された。


「跡部、よかったなぁ!」

「や、やめろ!」


髪がぐちゃぐちゃになるまで撫でて喜んでくれた岳人。

それを見て笑っている仁王がいた。


俺はいつから人に頼って生きるようになったんだろう?





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