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act.6…恋わずらい


何となく、またはぼんやりとという表現が相応しいだろうか。

気がつけばいつも蓬莱のことを思い出していた。

それは学校でもだった――。


「あーとーべー?」

「……あん?」

「何しとう?次は移動教室じゃけ。」


二人に声をかけられ、辺りを見渡すとさっきまで教室にいたはずの生徒が誰一人いなかった。

時計を見れば次の授業が始まるまで3分しかないため、早く早くと急かす岳人。


「今行くから、待て岳人。」

「まぁ、まだ時間はあるけぇ。焦らず準備しんしゃい。」


栄祥学園では午前は一般教科、午後は専門教科と分けられている。

しかし、学科が違ってもクラスはごちゃ混ぜだった。

レベルの差が開きすぎないように、という学園長の計らいとか。

運良く俺ら三人は同じクラスになれた、というだけの話。


「なんか跡部さ?動き悪くね?」

「本当にトロいのう?」

「うっせ。トロい言うな。」


いつも寝てばかりのヤツに言われたくはないが、仁王より動きが遅いのは事実だった。


「……なんかあったん?」

「なんもねーよ。」

「ハッ、嘘言いんしゃい。俺ん目には何かが変わったおまえさんが見えるナリ。」

「うん。それはいくら鈍い俺でもわかるぜ?」


昔から絡むことの多かったコイツらに黙り通せるのは時間の問題だった。

でも、心配かけたくなかったということもあり、話すかどうか悩んでいた。


「そういや、金曜の夜に世界テニス選手権あるよな!」

「そうじゃったのう。よう思い出した、向日。ご褒美に飴玉やるけぇ。」

「お。やった!」


小さな飴玉を仁王から受け取り、岳人は宙に飴を投げて口の中に入れた。

お見事。


「なら金曜は跡部んちで見なきゃ、やのう。」

「デカい画面で見たいもんな。跡部、良いだろ?」

「あ?あぁ……」


話を大して聞いていなかったのに適当に返事をしたのが間違いだった。

なぜこんなに俺の動きが遅いのかバレるのは本当に時間の問題となったからだ。



いつもなら楽しそうな二人に加わってくだらないことっ笑うのに今日はそんな気にはなれなかった。

それだけではなく、心配している二人に気付きもしなかった。


「跡部、大丈夫かな?」

「さぁ?変なもんでも食うたとか?」

「おまえじゃねんだから。」

「拾い食いする向日に言われとうない。」

「しねーよバカッ!それをするのは丸井だろが!」

「(ブン、拾い食いするんかアイツ。)」


その日からまさに俺は燃料切れしたロボットのようだった。

いつもサラッと解ける問題にやたら時間がかかったり、食べこぼしたり、何にもないところで転けたり。

踏んだり蹴ったり。

いや、どちらかと言えば踏まれたり蹴られたりだ。





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