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act.4…また会えると信じ


あれからずっと話し込んでいた。

気がつけば街はけばけばしいネオンや街灯で昼間のように明るく栄えていた。

しかし、見上げた空は街明かりで一等星さえ見えなかった。


「そういや名前聞いてなかったな?」

『あ、そうだったね。私、米倉蓬莱。』

「年は?」

『20。』


年齢を聞き、大人びた容姿をしている彼女を改めて見て納得できた。

5歳しか変わらないのに別世界で生きる人間を見ている気分だった。


『君は?』

「跡部景吾、15歳。」

『うん、知ってる。でも、一応聞いてみた。』

「知ってる?なんでだよ?」

『あなたの通う栄祥学園は私の母校だからね。』


意外なところに繋がりってのはあるもんだ、と思った。

世間は狭いとはこのことだ。


『氷帝中等部と栄祥のテニス部に鳳佳梨くんって子いたの知らない?私、その子からあなたの話を何回か聞いてたから。』


思考を巡らせた結果、鳳佳梨(かり)という人物の情報に行き着いた。

優しく世話好きで子供好き、というのかイメージ的には保育士な感じの人。

さらに言うと氷帝テニス部時代の後輩だった鳳長太郎の従兄弟だと聞いたことがある。


『私の後輩なの。』

「高等部なのによく中等部の俺らも見てくれた先輩だ。」

『そっか、相変わらず面倒見いいんだね。彼らしい。』


なぜか共通の話題――鳳佳梨の話で盛り上がり、結局、話の流れから学校のこと、友達のことなんかを話した。

時間がどれだけ経過していたか気にも留めなかった。

それだけ楽しかったんだ。

意外なことに、こんなにも人に話をすることが出来たんだとわかった。

いつも短文でがさつな言い方で返事していたから。


「おまえは……年上だから蓬莱さんって呼ぶべきか?」

『5つしか違わないのになんか気持ち悪いよ〜。蓬莱でいいし、敬語もいらないよ。』


こんなにもガキ臭い俺相手に蓬莱は対等にそれも優しく接してくれた。

そんな自然な優しさが心地よかった。


『私は景吾って呼んでも良い?あ、でもそんな良い血筋の人に失礼かな?』


そう少し気にしてるようだったから俺は不機嫌になって彼女に言った。


「蓬莱は俺が跡部景吾だからって理由で失礼だとか思うのか?」

『違うよ?そんな呼び方してたら周りの人が困惑するでしょ?だから迷惑がかかると思って、』

「俺はおまえに景吾って呼んでもらいたいぜ?」

『本当に?』


優しいくせに自分からは一歩引いて距離を置こうとするのは不安なせいか。

俺のことを本当に考えてそう言ってくれたんだと思うと胸が熱くなった。


『じゃあ、改めて景吾ね?……あっ、いけない!』

「なにがだよ?」


明るくなり始めた空を見上げるなり慌てて立ち上がった蓬莱がそのままどこかに行ってしまいそうな気がしてとっさに腕を掴んだ。


『時間、遅れちゃう。』


なにか急いでいるようにも見えたから渋々腕を放した。

周りの鬱陶しいネオンは静かに眠り、空は明るくなり始めていた。

こんな早朝になにがあるのだろう、と思ったがそこまでは聞かなかった。


『ごめんね、景吾。』

「いいや?こんな時間まで付き合ってくれてありがとよ?」

『私も楽しかった!』


嘘でもそういってくれたことが嬉しかった。


俺が彼女について知ったことと言えば、名前と年齢、出身校だけだった。

それだけわかれば、彼女について振り返るには十分だった。





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