[携帯モード] [URL送信]
act.3…知らぬ初恋


初めて会った、それも名さえ知らない彼女が俺を理解してくれたことが嬉しかった。


『やっぱり寂しいの?』

「さ、寂しいわけねーだろ!バカにすんな。」

『そっか……ごめんね。』


優しく微笑みながら、彼女はハンカチを俺に差し出してくれた。


『キミ強いね?私なら泣いちゃうかも。』

「強くねーよ。それに俺は初めから独りなんだよ。」

『人は独りでは生きていけないの。キミも例外じゃないよ。』

「なら、おまえもか?」

『うん、私も……キミに負けないように頑張らなくちゃ。』


そう呟いた彼女の横顔を見れば、俺がよく知っている顔だった。

いつも鏡で見ていた表情――。


「……実はおまえも寂しいんだろ?」

『!』

「そういう顔してるぜ?」


鏡に映る自分がなぜそんな表情をするかは知らなかったが、いつも見ていたおかげでわかった。

今、その表情が寂しさを表すものだと理解したわけだ。


『……弱音は吐かない主義なの。』

「おまえだって強ぇーじゃん。」

『強くはないの。ただ慣れただけ。』

「孤独に慣れる人間なんかいるかよバーカ。」


嘲笑して気づいた。

人間が孤独のうちに生活することが出来ないと俺自身が理解していたこ。


『寂しい、って言えば何かが変わる?キミは変わった?』

「試しに言ってみろよ。変わるかもしれないだろ?」

『……私、すごく寂しいの、』


涙を浮かべた彼女によくできました、と頭を撫でてやった。

つい癖で手を出してしまったことに気付いて慌てて手を引っ込めた。


「今は一人じゃない。俺がいるから独りではないだろ?」

『……うん。』


しかし、彼女は嫌な顔一つしていない。

むしろ、嬉しそうに微笑んでいて、彼女を見てなんて綺麗なんだろうと思った。

そう、俺はこのとき、名前も知らない彼女に恋心を抱いた。

しかし、まともに恋愛なんてしたことがない俺がそのことに気づくのはまだ早い。





無料HPエムペ!