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act.41…線香花火が呼んだ恋


翌日の夕方。

中村が岳人と仁王を俺たちの元まで案内してきた。

岳人は菓子とスーパーの袋を抱え機嫌がよさそうだった。


『ずいぶん早いね。まだ準備に時間かかるよ?』

「バーベキューの手伝いするために来たの!なぁ、仁王?」

『ありがとう助かる。』


蓬莱はそう言うと仁王と俺に指示を与えた。

野菜を切っている蓬莱を仁王が手伝い始めた。

一方、俺は蓬莱に言われたとおり飲み物を用意するため、重い足取りで冷蔵庫に向かった。

なぜか岳人は上機嫌で俺の後ろについて歩いていた。


「そういや岳人。ジュースなんだけどよ?」


謝るには丁度いいと思い、冷蔵庫を開けて例の物を取り出す。

それを岳人の前に差し出すと目を点にしていた。


「ただの炭酸水?」

「素(もと)を買いそびれてよ?」

「……えー!ただシュワシュワしてるだけとかウザいしー!!」

「悪い、」

「跡部のバカぁ!!」


頬を膨らませて拗ねた真似をする岳人を見て内心で子供みたいだ、と笑った。

俺はそれに混ぜるオレンジジュースを探しながら話題を変えた。


「昨日の遊園地でのことなんだが…」

「なに?なんかあったの?」

「俺が蓬莱と歩けるようにいろいろしてくれたんだろ?」

「……なんでそれ知ってんの?」


岳人は不思議そうに首を傾げていた。

そう思うのも無理はない。


「昨日、仁王に聞いた。あの蓬莱がスーパーでは声をかけられかけたのに遊園地では誰にも声をかけられなかったのが不思議でな。」

「バレちゃあ、仕方ないな!」


岳人はあはは、とわざとらしく笑い、俺に背を向けた。

恐らくこれは照れ隠しだろう。


「岳人、ありがとな。」

「……へへ!跡部のためだもん!」


振り向くと俺にギュッと抱きついてきた岳人の頭をなんとなく撫でた。

女みたいな仕草しやがって、なんて思ったが今は言わないでおいた。

折角機嫌を取り戻したのにまた不機嫌になられても困るからだ。



*



さて、バーベキューも蓬莱の手際が良かったため、早くに始めることができた。

焼き芋も中村がまとめてくれていた木の葉ですぐに始めることができた。

岳人が喜んで焼き芋を頬張るのをみんなで眺めていた。


『岳人は本当によく食べるね。』

「そう?」

「芋はあんまり食うと、屁が出るぜよ?」


それを聞き、岳人の手と口がピタリと止まった。

いつも仁王の言葉は岳人に大きなダメージを与える。


「仁王のバカぁ!!」

「はは、悪い悪い。」

「もー食わねぇ!!」

「そう怒りなさんな?」

「仁王なんか嫌いだ。」


そう子供みたいにツンと鼻を高くしてそっぽ向く岳人。

仁王は笑いながらスーパーの袋を開けた。


「俺、向日ん為に花火買うてきたのに〜」

「!」

「やらんの?」

「やる!」


花火を見て目を輝かせた岳人はまた芋を手にとり、喜んで仁王の隣に腰を下ろした。

それを見ていた蓬莱は現金だな、と笑いながら言った。

今、岳人の扱いは忍足以上に仁王は上手いだろう。


「やっぱ最後は――線香花火だろ!!跡部も蝶もやろーぜ?」

「最後まで残った人が勝ち、っちゅうやつか?」

「はっ、受けて立つ!」

『私も負けないよ?』


岳人の提案に乗り、みんなでほぼ一斉に火をつけた。

柔らかい光を放つそれを眺めていると心が落ち着いた。が、


「最後まで火種が落ちなかったら恋が実る〜なんつって!」


そう岳人が言うもんだから妙に反応してしまった。

そのため、微かではあるが動いてしまったために火種が地面に落ちて消えた。


「あ〜あ!跡部の負け〜!」

「恋も実らんな。」

「かっわいそうー!」

「うるせぇんだよ!!」


その会話を聞いて蓬莱がか細い声で少し遠慮しながら問い尋ねてきた。


『景吾、好きな人でもいるの?』

「あ、いや…」

「やだなぁ、蝶ってばぁ!」

「好きな人がおったら実らんっちゅう話じゃけ。」

『なんだ、そうなんだ。』

「「(……もしかして。)」」


俺は一人、蓬莱にバレなくてよかったと思って安心していた。

しかし、コイツら二人は違った。


「もしかすると知らないだけで跡部ってば、両思いかもなぁ〜?」

「『!』」

「あ、蝶落ちた。」


岳人がわざとらしく言うことに反応した俺と蓬莱。

それを見て仁王が楽しそうにのどを鳴らして笑っていた。





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